「集落と伝統について」 ひとりごアート

「集落と伝統について」 ひとりごアート

「集落と伝統について」 ひとりごアート

現在、収益物件である6棟が集まった集落のような環境設計の相談を受けています。そこで、集落・村ということについて考えはじめ、伝統との関係性に「問い」を持ち始めているところです。思考途中経過ではありますが、ひとりごと+アート(芸術)を混ぜ合わせた「ひとりごアート」をしてみます。

 

集落を考える際、地域性・民族性などによって文化は異なり、その歴史において、それぞれの伝統があると考えられている。伝統は、地域性・民族性が色濃く表現され、自然発生的で長い時間の経過と共に変化し続ける現象により生まれる。しかし、一つの地域だけで考えるのではなく、世界的な視点で考えると、離れた地域においても、類似的な集落が多く点在している事実を知る。人間が生きるためにいろんな工夫やアイデアで費やしたエネルギーの集積、本質を問い続け進化させてきた住まいの集合体である集落は、紛れもない伝統である。集落のあり方を探り、伝統について考えてみます。

 

世界の集落をしらべると、地域の特性と思われるものが、全く離れた地域においても類似的なものがある。「伝播によって説明しきれるものではなくて、離散的な多発性がある」。よって、ある地域の伝統は、他の地域での伝統でもあるということがいえる。集落の伝統を考えるときは、グローバルな人類史・人類の伝統と捉えるマクロ的な視点と、地域特有のミクロ的な視点の両方向から見つめる必要がある。マクロ的な視点で集落を考えてみる。一つの集落をA、少し離れた集落をBとする。この時、それぞれの特徴的な伝統が生まれる。注目したいのはAとBの境界付近の交じり合う集落の伝統についてだ。この境界付近には複雑な特有の伝統が生まれるはずである。そして、この現象は、グラデーションで各集落に影響を与えながら広がり、さまざまなカタチに変容した伝統が生まれ変化を続ける。

 

日本伝統を考える上で激動の明治維新について考えてみる。明治維新に行われた国の政策では、伝統を一度断ち切って、カタチを変えて新しい伝統をつくりだした過去がある。代表的なものとしては、神仏分離や廃仏毀釈は、日本の伝統である仏教思想に与えた精神的な影響は大きい。また、廃藩置県で国が力を持つのも明治維新である。西洋を意識して近代化を目指した政策は、多くの日本伝統を政治によって大きく変化させた。このように、政治により容易に変化する伝統は、本来カタチの無いものであり、美化されたイメージのようなものであることがわかる。

 

伝統とは、完成した「もの」や「こと」のことではない。古くから伝わり守られ維持されてきたものではなく、常に進行形である。伝統は固定されてしまった時点で命がなくなり、変化に対応できなくなり、やがては消えていく。人間が求める都合のよい伝統のあり方や理想的なカタチ、また、時代に合わせて変容して、変化し続けるのが伝統である。伝統とは、人間の価値観・イメージによってつくられた幻想のようなものである。

 

設計する際に、その地域の表面的な伝統らしいカタチとなった「もの・こと」を重んじることで、形式のみが伝わっていくという滑稽なことになってしまう。大切なことは、本当に伝えていくべき本質に、常に目を向けて対話・思考を続けていくことと感じています。すまいについても同じであり、形式化された数値化された箱をつくるのではなく、人としての快適性や自然との関わりといった本質を追求する設計姿勢を忘れないで、人が集まる場をつくっていきたい。

 

 

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にて新築工事・リノベーションの設計・監理の実績。

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