空間ブランディングを成果につなげる5つの設計視点|行動・滞在・記憶をどう設計するか「ひとりごアート」

空間ブランディングを成果につなげる5つの設計視点|行動・滞在・記憶をどう設計するか「ひとりごアート」

美しい空間をつくった。

コンセプトも考えた。

リノベーションにも十分な費用をかけた。

それでも、

「思ったほど使われない。」

「ほかとの違いが伝わらない。」

「事業の価値につながっている実感がない。」

ということがあります。

なぜでしょうか。

私は、その原因の一つは、

空間を「完成させること」が目的になり、その後に人がどう行動するかまで設計されていないこと

にあると考えています。

空間ブランディングは、きれいな建築をつくることだけではありません。

人が、

入る。

歩く。

立ち止まる。

過ごす。

記憶する。

もう一度選ぶ。

その体験まで考えることが重要です。

空間ブランディング全体の考え方については、こちらで詳しく整理しています。

→ 空間ブランディングとは|「選ばれる理由」を空間からつくる経営戦略

空間ブランディングは「ブランドを飾ること」ではない

空間ブランディングという言葉から、

ロゴ。

ブランドカラー。

サイン。

高級な材料。

統一されたインテリア。

を想像することがあります。

もちろん、それらも表現の一部です。

しかし、本当に重要なのはその前です。

この場所は誰のためにあるのか。

何を体験してほしいのか。

利用したあとに何を感じてほしいのか。

なぜ競合ではなく、この場所を選ぶのか。

そこが決まらないままデザインだけを整えても、

見た目はよいが、事業との関係が弱い空間

になってしまうことがあります。

だから私は、形を決める前に「人の行動」を考えます。

1|行動を設計する

最初に考えるのは、人がどう動くのかです。

どこから入るのか。

何を最初に見るのか。

どこで迷うのか。

どこで立ち止まるのか。

誰と出会うのか。

どこまで進みたくなるのか。

店舗なら、入口から商品や席までの流れ。

オフィスなら、集中・打ち合わせ・交流の関係。

クリニックなら、受付・待合・診察・会計の流れ。

宿泊施設なら、到着してから客室へ入るまでの体験。

動線は単なる通路ではありません。

そこで何が起きるかを支える構造

です。

2|滞在を設計する

次に考えるのが、

「そこに居続けたいと思えるか」

です。

滞在時間を長くすれば売上が上がる、と単純には言えません。

事業によっては短時間で快適に利用できることの方が重要です。

だから大切なのは、

その場所に必要な滞在時間をどう支えるか。

です。

光。

音。

温度。

素材。

視線。

椅子。

人との距離。

外との関係。

これらを組み合わせて、そこで過ごす時間をつくります。

例えばオフィスなら、

一人で集中したい。

少し人と話したい。

場所を変えて考えたい。

という状態を選べることも、滞在環境の質です。

→ 愛知のオフィス設計|「会社らしい建物」とは何か。企業の価値を空間にする「ひとりごアート」

3|記憶を設計する

人は、建築のすべてを覚えているわけではありません。

しかし、

入口から見えた景色。

光。

庭。

木に触れた感覚。

静けさ。

人との会話。

など、断片的な記憶が残ります。

私は、

「何を記憶して帰ってほしいのか」

を考えます。

ただし、記憶に残るために奇抜な形をつくる必要はありません。

静かな空間も記憶に残ります。

余白も記憶に残ります。

小さな光景も記憶に残ります。

重要なのは、

その事業、その土地、その人だから生まれる体験があることです。

4|意味を設計する

次に、

「なぜ、この場所なのか」

を考えます。

流行しているから木を使う。

人気だから和モダンにする。

SNSで映えるから大きなサインをつくる。

それだけでは、簡単に真似されます。

一方、

既存建物の歴史。

地域の材料。

企業の技術。

経営者の考え。

敷地にある景色。

事業の成り立ち。

から設計すれば、その場所にしかない理由が生まれます。

この「意味」があることで、デザインは単なる装飾ではなくなります。

5|最初に「何を変えたいのか」を決める

最後が最も重要です。

設計を始める前に、

この建築によって、何を変えたいのか。

を整理します。

例えば、

店舗なら、商品や料理の価値が伝わる場所にしたい。

オフィスなら、集中と交流の両方を改善したい。

クリニックなら、患者の不安やスタッフ動線を改善したい。

賃貸住宅なら、競合とは違う住み方をつくりたい。

既存施設なら、新しい用途を与えて再び使われる建物にしたい。

ゴールが違えば、必要な建築も違います。

だから、

「とりあえずおしゃれにする」

ではなく、

目的から逆算して空間をつくる。

それが空間戦略です。

賃貸住宅では「住み方」そのものを差別化した

愛知県小牧市の6棟の戸建て型賃貸住宅では、

何戸入るか。

床面積をどこまで取れるか。

だけから計画を始めませんでした。

建物を一棟にまとめず、あえて6棟に分けています。

そのことで、

戸建てに近い独立性。

プライバシー。

人の気配。

敷地の余白。

を両立させました。

「集まって、離れて住まう」

という暮らし方そのものを、物件の価値にしています。

これは外観を特徴的にするためのデザインではありません。

入居者が何を感じ、どんな暮らしをするのかから考えた結果です。

→ 6棟の戸建て賃貸|「集まって、離れて住まう」収益物件設計

→ 遊休地・相続した土地を「戸数」だけで考えない土地活用

使われていなかった場所に「次の役割」をつくる

既存建物の場合、価値をつくる方法はさらに変わります。

愛知県の食品工場では、使われていなかった空間を就労継続支援の場へ転換しました。

新しい建物を建てることだけが答えではありません。

すでにある空間を読み直し、

誰が使うのか。

何が必要なのか。

どうすれば別の価値を持てるのか。

を考えることで、遊休空間に新しい役割を与えることができます。

→ 使われていなかった食品工場を、新しい働く場所へ

既存建物の活用についてはこちらで詳しく整理しています。

→ リノベーション・既存建物活用について

「成果」を建築だけの手柄にしない

空間ブランディングの記事では、

売上が上がる。

リピート率が上がる。

採用できる。

入居率が上がる。

という表現が使われることがあります。

しかし私は、

建築だけで事業成果が決まるとは考えていません。

商品。

サービス。

経営者。

スタッフ。

価格。

広報。

立地。

市場。

さまざまな要素があります。

建築ができるのは、その中の「空間」という大きな部分を整えることです。

例えば、

人が迷いにくい。

商品や事業の価値が伝わる。

落ち着いて過ごせる。

働きやすい。

競合とは違う体験がある。

既存建物が新しい用途で使える。

こうした状態をつくる。

その積み重ねが、事業を支える一つの要素になります。

だから私は、

「結果を保証する空間」ではなく、「結果につながる条件を整える空間」

を設計したいと考えています。

空間ブランディングと空間戦略の違い

この二つは、かなり近い言葉です。

私の中では、

空間ブランディング
=その事業の価値や「選ばれる理由」を空間として伝えること。

空間戦略
=事業・人・土地・既存建物・将来まで含めて、そもそも何をつくるべきかを判断すること。

と整理しています。

例えば、

新築するのか。

リノベーションするのか。

建てないのか。

何を残すのか。

用途を変えるのか。

から考えるのが空間戦略。

その結果生まれた場所で、

何を感じてもらい、

どう記憶してもらうのか。

まで考えるのが空間ブランディングです。

両方は切り離せません。

空間は「つくって終わり」ではない

建築は完成すると、一つの区切りを迎えます。

しかし、本当の価値が見えてくるのは、その後です。

人がどう使うのか。

想定していなかった使い方が生まれるのか。

どこに人が集まるのか。

何が使われなくなるのか。

そこで何を感じるのか。

私は「森と川に咲く花」を自ら運営しているため、完成後の空間を日常的に観察しています。

そこで実感するのは、

設計した通りに人を動かすことが目的ではない

ということです。

人が自然に使い方を見つけられる余白も必要です。

空間ブランディングは、人を操作する技術ではありません。

人や事業に必要な環境を整え、その場所の価値が伝わりやすくすることだと考えています。

→ 森と川に咲く花|築70年工場を人と価値が集まる場所へ再生

空間ブランディングを考えるときの5つの問い

計画を始める前に、次の5つを考えてみてください。

  1. 誰に使ってほしいのか
  2. そこで、どんな行動が起きてほしいのか
  3. どんな時間を過ごしてほしいのか
  4. 何を記憶して帰ってほしいのか
  5. なぜ、ほかではなくこの場所なのか

この答えが明確になれば、

どんな形にするのか。

どんな素材を使うのか。

どんな動線にするのか。

という建築の判断にも理由が生まれます。

空間ブランディング・リノベーションを考えている方へ

店舗や施設を改修したが、競合との違いが伝わっていない。

オフィスを企業価値につなげたい。

賃貸住宅や土地活用を、戸数と利回りだけで考えたくない。

既存施設に新しい用途を与えたい。

何をつくればよいか自体がまだ決まっていない。

その段階からでも構いません。

梶浦博昭環境建築設計事務所では、

「どんなデザインにするか」の前に、「その空間で何を変えたいのか」から考えます。

→ 空間ブランディングの全体像を見る

→ 体験価値を事業・収益につなげる空間設計

→ リノベーション・既存建物活用について

→ 店舗・オフィス・クリニック・宿泊施設などの建築事例

→ 設計の流れ・建築相談について

→ 空間ブランディング・建築について相談する

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