診療を続けながらクリニック改修はできる|医院を止めない段階リノベーションの考え方「ひとりごアート」

診療を続けながらクリニック改修はできる|医院を止めない段階リノベーションの考え方「ひとりごアート」

診療を続けながら、クリニックをリノベーションできるのでしょうか

クリニックが古くなってきた。

待合室を改善したい。

患者動線を整理したい。

スタッフが増えて手狭になった。

院長交代を機に医院の印象を変えたい。

設備も更新したい。

でも、

「長期間休診することは難しい」

という医院は少なくありません。

クリニックは一般の店舗とは少し違います。

患者さんは継続して通院しています。

スタッフも日々働いています。

医療機器があります。

診療を止めること自体が、医院経営や地域医療に影響する場合があります。

そこで選択肢になるのが、

医院を使いながら、工事範囲を分けて改修する「段階リノベーション」

です。

ただし、どんなクリニックでも診療を続けながら工事できるわけではありません。

建物の状態。

工事範囲。

診療内容。

患者動線。

工事動線。

音や粉塵。

設備停止。

安全管理。

などを見ながら判断する必要があります。


「全部休んで全面改修」だけが答えではない

既存クリニックを改修するとき、

一度医院を閉めて、

内部をすべて解体し、

全面的に改装する。

という方法があります。

工事としては進めやすい方法です。

一方で、

数週間、数か月単位で診療を止めることが難しい医院もあります。

その場合、

1階と2階を分ける。

診療エリアと工事エリアを分ける。

休日や休診日を利用する。

第一期、第二期に分ける。

仮設の診療スペースをつくる。

など、複数の方法を検討します。

重要なのは、

「どこから工事するか」まで設計すること。

です。


森整形外科|既存医院を使いながら段階的に再構成する

一宮市の森整形外科は、築年数を経たRC造の既存医院です。

院長の代替わりを含め、今後の診療を見据えながら段階的にリノベーションを進めています。

【建築事例】森整形外科 1Fリノベーション

【建築事例】森整形外科 2Fリノベーション

ここで重要なのは、

単に古くなった内装を新しくしたことではありません。

既存医院を使いながら、

患者さんがどこを通るのか。

スタッフはどう動くのか。

どこを先に改修するのか。

将来どこまで変えていくのか。

を考えています。

つまり、

「完成後の間取り」だけでなく、「完成までどう医院を使うか」も設計対象になります。


段階改修は「工事を半分ずつやる」だけではない

例えば100㎡の医院を、

50㎡ずつ改修すればよい。

という単純な話ではありません。

工事する側には、

資材搬入。

解体材搬出。

職人の出入り。

騒音。

粉塵。

工具。

があります。

診療側には、

患者さん。

高齢者。

車椅子。

スタッフ。

医療機器。

薬品。

清潔性。

があります。

この二つを同じ建物の中で共存させる必要があります。

だから、

診療動線と工事動線をどう分離するか

が非常に重要になります。


1.どの診療機能なら一時的に動かせるか

最初に整理するのは、

絶対に止められない機能。

一時的に移動できる機能。

休日に工事できる部分。

ある期間使わなくてもよい部分。

です。

例えば、

受付。

待合。

診察室。

処置室。

リハビリ。

検査。

スタッフスペース。

では重要度や移動可能性が違います。

まず、

医院の機能を「部屋」ではなく「診療活動」として分解する。

そこから工事順序を考えます。


2.患者さんと工事業者の動線を分けられるか

入口が一つしかない建物。

階段が一つしかない建物。

細い廊下しかない建物。

では、工事区画を分けることが難しい場合があります。

一方で、

別入口が使える。

階ごとに分けられる。

裏側から搬入できる。

という建物なら、段階工事を組み立てやすくなる場合があります。

つまり、

既存建物の間取りそのものが、工事方法に影響します。


3.音・振動・粉塵をどこまで抑えられるか

診療中に、

隣で大きな解体音がする。

振動が伝わる。

工事臭がする。

粉塵が入る。

という状態は避けなければなりません。

そのため、

大きな解体は休診日にする。

仮囲いを設ける。

工事区画を密閉する。

工事時間を制限する。

などを考えます。

工事内容によっては、

診療しながら行うこと自体が適切でない場合もあります。

「医院を絶対に休まない」を最優先にすると、安全や施工品質を損なうことがあります。


4.設備を止める時間を確認する

リノベーションでは、

電気。

給水。

排水。

空調。

通信。

医療機器。

などを触ることがあります。

内装工事は診療後にできても、

配管の切替で水を止めなければならない。

電源工事で停電が必要。

空調を停止する必要がある。

ということがあります。

そのため、

建築だけでなく設備工事の切替時間まで工程に組み込む

必要があります。


5.仮設の受付・待合・診察室が必要になることもある

既存の受付を改修するとき、

その期間、患者さんをどこで受け付けるのか。

待合室を工事するとき、

患者さんはどこで待つのか。

診察室を改修するとき、

代わりの診察室を確保できるのか。

という問題があります。

場合によっては、

既存の別室を一時転用する。

先に新しい場所を完成させてから移動する。

という玉突きのような工程を考えます。


最初に「完成形」を考えてから、工事を分ける

段階改修で避けたいのは、

今年は受付。

来年は待合。

その次は診察室。

と、その都度別々に考えることです。

これを繰り返すと、

床材が違う。

設備位置が合わない。

動線が途中で破綻する。

先に工事した場所を再び壊す。

ということが起こる場合があります。

だから、

最終的に医院全体をどうしたいのかを先に描き、その完成形を何期に分けて実現するか

と考えます。


部分改修と段階改修は少し違う

似ていますが、意味は少し違います。

部分改修は、

待合だけ。

受付だけ。

トイレだけ。

診察室だけ。

と、必要な部分だけを改善する方法です。

一方、

段階改修は、

最終的には医院全体を見直す計画を持ちながら、工事を複数回に分ける方法です。

どちらがよいかは、

予算。

診療。

建物。

将来計画。

によって変わります。


「待合室だけ改装したい」でも、一度医院全体を見る

例えば、

待合室が古いのできれいにしたい。

という相談でも、

私は待合室だけを見るとは限りません。

なぜ混雑しているのか。

患者さんがどこで滞留しているのか。

受付との位置関係はどうか。

診察室への動線はどうか。

スタッフが待合を横切っていないか。

を見ることがあります。

待合室の問題に見えて、

本当の原因が医院全体の動線にある場合があるからです。


クリニックリノベーションでは「今の使われ方」が最大の資料になる

新築とは違い、既存医院にはすでに長い運営実績があります。

どの時間に混雑するのか。

どの席がよく使われるのか。

患者さんがどこで迷うのか。

受付スタッフが何度立ち上がるのか。

看護師がどこを往復しているのか。

物がどこにあふれているのか。

スタッフがどこを近道しているのか。

こうしたことは、

現在の医院を観察すると見えてきます。

既存医院には、次の設計をつくるための一次情報が大量にあります。


院長交代は、医院を見直す大きな機会になる

事業承継のタイミングで、

診療方針。

スタッフ構成。

医療機器。

患者層。

医院の見え方。

を見直すことがあります。

一方で、

先代から続く医院の信用。

場所。

患者さんとの関係。

建物。

をすべて捨てる必要があるとは限りません。

森整形外科でも、

既存医院を使いながら次の診療環境へつなげています。

クリニックリノベーション|事業承継と動線から考える医院設計

事業承継=建替え

でも、

事業承継=何も変えない

でもありません。

その医院に合った中間の答えがあります。


築年数が古い医院でも、リノベーションできるとは限らない

既存クリニックだから、

リノベーションの方が安い。

診療を続けながら改修できる。

とは限りません。

確認する必要があるのは、

構造。

耐震性。

設備。

防水。

法規。

劣化。

必要な面積。

今後の診療内容。

などです。

大規模な補強や設備更新が必要なら、

建替えと費用差が小さくなることもあります。

だから、

最初から「リノベーションする」と決めないことも重要です。

建替えか、リノベーションか|既存建築の「残す価値」を考える


修繕で十分なのか、リノベーションまで必要なのか

床が傷んだ。

壁が汚れた。

空調が古い。

という問題だけなら、

修繕で十分かもしれません。

一方、

診療方法が変わった。

患者数が変化した。

スタッフが増えた。

動線が悪い。

院長が交代した。

医院の役割自体を変えたい。

のであれば、

リノベーションとして医院全体を見直す意味があります。

修繕とリノベーションは何が違う?|既存建物を「直す」から「活かす」へ


全面改修の方が合理的な場合もある

段階改修には、

診療を継続しやすい。

投資を分散できる。

という利点があります。

一方、

仮設工事が増える。

何度も工事業者が入る。

工期全体が長くなる。

工事区画の切替が必要になる。

といった面もあります。

そのため、

休診期間を確保して一気に全面改修した方が、

結果として合理的なケースもあります。

段階改修そのものを目的にしない。

ここも大切です。


スタッフへのヒアリングが重要になる

既存医院の改修では、院長だけでなく、

受付。

看護師。

リハビリスタッフ。

事務。

など、実際に働く人の意見にも重要な情報があります。

例えば、

「ここに収納が欲しい」

という要望の奥には、

一日に何度も物を取りに行っている

という問題があるかもしれません。

「廊下を広くしたい」

という話の奥には、

患者さんとスタッフが頻繁にぶつかっている

という原因があるかもしれません。

要望そのものだけでなく、

なぜ困っているのか

まで見ます。


既存医院のリノベーションでは「残すもの」を選ぶ

全部を新品にすれば、

見た目は大きく変わります。

でも、

まだ使える設備。

構造。

建具。

家具。

患者さんが慣れている場所。

まで全部交換する必要があるとは限りません。

逆に、

見た目はきれいでも、

動線や設備に問題があれば残さない方がよいこともあります。

新しくするもの、残すもの、位置を変えるもの。

これを分けることが、リノベーション設計です。


医院を止めずに改修するために、最初に確認したい7つのこと

1.絶対に止められない診療機能は何か
診察、処置、検査、受付など。

2.工事区画と診療区画を分離できるか
入口・廊下・階など。

3.仮設スペースを確保できるか
受付・待合・診察室。

4.電気・水・空調などをいつ切り替えるか
休診日・診療後も含めて考える。

5.騒音・振動・粉塵へ対応できるか

6.最終的な医院全体の完成形は何か

7.段階改修・全面改修・建替えのどれが合理的か

この順で整理します。


既存医院だからこそ、改善できることがある

新築では、

将来どう使われるかを想像して設計します。

リノベーションには、

すでに答えの一部があります。

何年も診療してきたことで、

うまくいっていること。

困っていること。

患者さんの動き。

スタッフの習慣。

が分かっているからです。

つまり、

一度使った医院を、実際の経験をもとにもう一度設計できる。

ここにクリニックリノベーションの大きな可能性があります。


建築相談カフェ|休診できない段階からご相談ください

梶浦博昭環境建築設計事務所では、一宮市を拠点に、名古屋・愛知・岐阜を中心として、

既存クリニックのリノベーション。

医院の部分改修。

段階改修。

事業承継に伴う改修。

待合室・受付の改善。

患者動線・スタッフ動線の見直し。

設備更新を伴う医院改修。

建替えとの比較。

などを検討しています。

「長期間休診できない」

「どこから改修すればよいか分からない」

「待合室だけ直すべきか、医院全体を見るべきか迷っている」

「院長交代を機に改修したい」

「予算の関係で工事を何期かに分けたい」

「この古い医院をまだ使えるのか知りたい」

という段階からでも構いません。

リノベーションすると決めてから相談する必要もありません。

現在の医院を見ながら、

何を残し、

何を変え、

どの順番で工事するのか。

そこから一緒に考えます。

梶浦博昭環境建築設計事務所では、計画初期から相談できる**「建築相談カフェ(90分・無料)」**を行っています。

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