なぜ同じ地域にある建物なのに、人が集まり続ける建物と、空室が増えていく建物があるのでしょうか。
なぜ同じ面積、
同じ築年数、
同じ立地でも、
不動産価値に大きな差が生まれるのでしょうか。
商業施設設計やオフィス設計、クリニックリノベーション、宿泊施設リノベーションの相談を受ける中で、私はいつも同じ問題に出会います。
それは、「建物はあるのに、人が集まらない」という問題です。
実はこの問題は、集客の問題ではありません。資産価値の問題でもありません。
もっと根本にある、「人との関係性をつくる空間」の問題なのです。
賃貸オーナーであれば、空室率が気になる。
経営者であれば、来店客数が気になる。
施設運営者であれば、リピート率が気になる。
しかし実際には、広告を増やしても効果が続かない。SNSを頑張っても集客が安定しない。設備を更新しても思ったほど成果が出ない。これは珍しいことではありません。愛知県・岐阜県・三重県・名古屋エリアでも同様です。
多くの施設が、「認知はされている」にもかかわらず、「選ばれ続けない」という課題を抱えています。
問題の本質は建物ではありません。人でもありません。構造です。
人は合理的に選んでいるようで、実際には感情で場所を選びます。
環境心理学の研究では、人は安心感や帰属感を感じる場所に繰り返し訪れる傾向があることが示されています。
また、アメリカの社会学者であるRay Oldenburgは、家庭でも職場でもない「サードプレイス」の重要性を提唱しました。
つまり、人が集まる建物とは、単なる機能の器ではなく、人間関係や記憶が蓄積される場なのです。
多くの場合、価値向上策として行われるのは、
・外観改修
・設備更新
・賃料調整
・広告強化
です。もちろん必要な場合もあります。しかし、これだけでは根本解決になりません。
なぜなら、人は設備を記憶しないからです。人は体験を記憶します。建物の価値を守るのは、設備のスペックではなく、そこで生まれた感情なのです。
ここで重要になるのが、空間ブランディングではなく、空間戦略という考え方です。
空間戦略とは、建物をデザインすることではありません。人が集まり、滞在し、再訪したくなる構造を設計することです。
つまり、資産価値設計です。経営価値設計です。ブランド体験設計です。
例えば、古民家再生が人気になる理由も同じです。人は木材そのものに惹かれているのではありません。そこにある物語や体験価値に惹かれているのです。
では、人が集まる建物には何があるのでしょうか。共通しているのは、余白です。例えば、
商業施設設計では、売場面積だけを最大化しません。滞在できる場所をつくります。
オフィス設計では、デスクだけを並べません。偶然の会話が起きる場所をつくります。
クリニックリノベーションでは、診察効率だけを追いません。不安を和らげる居場所をつくります。
宿泊施設リノベーションでは、客室だけを豪華にしません。思い出が生まれる共用空間をつくります。
距離。動線。光。素材。音。景色。これらの積み重ねが、人の心理に影響を与えます。
【事例:五感で差別化するクリニック設計 働きやすさと経営を高める「投資としての建築」】
なぜこの空間は利益を生むのでしょうか。理由は単純です。滞在時間が伸びるからです。なぜ口コミが起きるのでしょうか。記憶に残るからです。なぜ採用に効くのでしょうか。働く意味を感じられるからです。なぜ地域に愛されるのでしょうか。自分の居場所になるからです。
結果として、リピート率が上がります。紹介が増えます。空室率が下がります。ブランド価値が上がります。
つまり、人が集まる構造そのものが、長期的な資産価値を支えているのです。
名古屋・愛知県・岐阜県・三重県は、人口減少時代に入っています。今後は立地だけで選ばれる時代ではありません。どれだけ人の記憶に残るか。どれだけ地域の居場所になれるか。ここが重要になります。
実際に地域で愛されている店舗や施設を見ると、建物そのものよりも、人との関係性が資産になっています。これからの差別化は、価格競争ではなく、関係性競争になるでしょう。
これからの建築は、「建てる建築」から「選ばれ続ける建築」へ変わります。
AI時代になるほど、情報は均質化します。しかし、体験は均質化できません。
だからこそ、人が集まる場づくりが重要になります。建築家に求められる役割も、図面を描くことではなく、経営価値を設計することへ変化していきます。
本記事の要点を整理します。
差別化とは、他社と違う形をつくることではありません。人が集まり続ける理由をつくることです。
人が集まる建物は、機能を提供しているのではありません。記憶を提供しています。その記憶が、口コミを生み、再訪を生み、地域との関係を生みます。そして、その積み重ねが不動産価値を守ります。
つまり、資産価値を支えているのは建物ではなく、人との関係性なのです。
もし現在、空室対策や集客改善、施設価値向上を考えているのであれば、まず考えるべきことは、設備投資ではありません。
「なぜ人がここに来るのか」という理由です。
その理由は、間取りの中に隠れているかもしれません。動線の中に隠れているかもしれません。あるいは、建物そのものの役割に隠れているかもしれません。
空間戦略とは、建築をコストではなく未来資産として考えることです。
人が集まり、人の記憶に残り、地域に必要とされる建物をつくること。
それが結果として、不動産価値を守り、経営価値を高め、次の時代の競争力につながっていくのだと思います。
事業の成長につながる空間戦略について、ご相談を承っております。
・店舗、宿泊施設、オフィスの再構築
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・体験価値を収益につなげるには、空間全体の設計が重要になります。こちらで整理しています。https://kajiura-a.com/archives/blog/19754
・設計事務所の選び方 紹介で25年つづいてきた理由。こちらで整理しています。https://kajiura-a.com/archives/blog/19721
・なぜ私は住宅もオフィスもクリニックも店舗も宿泊施設も設計するのか。こちらで整理しています。https://kajiura-a.com/archives/blog/19956
・問い合わせ https://kajiura-a.com/contact/
梶浦博昭環境建築設計事務所 https://kajiura-a.com/ 『空間 × 感性 × 経営』
~ 見えない価値を、設計する~【名古屋・愛知・岐阜・三重を中心に25年の実績】
建築家 梶浦博昭|note インスタ kajiuraarchitect
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にて新築工事・リノベーションの設計・監理の実績。
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