古民家再生は地域活性化につながるのか|空き家を「次の用途」へつなぐ建築「ひとりごアート」

古民家再生は地域活性化につながるのか|空き家を「次の用途」へつなぐ建築「ひとりごアート」

古民家は、残せば価値になるのでしょうか

古い家が残っている。

相続したけれど、誰も住んでいない。

維持管理にはお金がかかる。

耐震性も心配。

直して使うべきなのか。

それとも解体した方がよいのか。

古民家や空き家の相談では、まずここから始まることが多くあります。

私も、

古い建物だから残すべきだ

とは考えていません。

反対に、

古いから壊すべきだ

とも思っていません。

重要なのは、

「この建物には、次の時代へ渡せるものが残っているか」

を見ることです。


古民家再生は「昔の姿に戻すこと」ではない

古民家再生という言葉から、

昔の状態をそのまま保存すること

を想像される方もいるかもしれません。

でも、私が考える再生は少し違います。

現在の暮らし。

現在の事業。

安全性。

設備。

使いやすさ。

を受け入れながら、

その建物にしかないものを次へ渡す。

つまり、

「過去を保存する」のではなく、「過去と現在をつなぐ」

ことです。


古い建物には、新築ではすぐにつくれないものがある

古民家を見るとき、私は単に築年数だけを見ません。

柱。

梁。

建具。

庭。

軒。

光の入り方。

部屋同士の関係。

街との距離。

そこで長い時間を過ごしてきた痕跡。

があります。

これらの中には、新築で同じような形をつくることはできても、

同じ時間まではつくれないもの

があります。

だからまず、

何を残すのか。

何を変えるのか。

何を新しく加えるのか。

を見極めます。


築70年の日本家屋を、宿泊施設へ

愛知県稲沢市では、築70年の日本家屋を宿泊施設として再生しました。

【建築事例】築70年日本家屋の宿泊施設再生

この建物で考えたのは、

「古い住宅をきれいに直すこと」

だけではありません。

住宅として使われてきた時間を、

宿泊する人がその土地を体験する時間へ変えること

でした。

庭。

建具。

木。

光。

既存の空間。

それらをすべて消してしまえば、新しい宿泊施設はつくれます。

でも、この建物でなければ得られない体験は失われます。

だから、

新しくする部分と、あえて新しくしない部分

を分けました。


「何もしない時間」が、その建物の価値になることもある

宿泊施設では、

たくさんの設備。

多くのサービス。

豪華な内装。

だけが価値ではありません。

庭を見る。

縁側に座る。

光が変化する。

木に触れる。

静かな時間を過ごす。

こうした、

「何もしない時間」

そのものが宿泊体験になる場合があります。

古民家には、この時間を受け止める力が残っていることがあります。

だから私は、

古民家再生をするとき、

「何を足すか」

だけではなく、

「何を足さない方がよいのか」

も考えます。


国土交通大臣賞を受賞した、築60年の移築古民家

梶浦博昭環境建築設計事務所では、築60年の移築古民家を現代の暮らしへつなぎ直した建築にも取り組んできました。

【建築事例】築60年の移築古民家再生

この建築は国土交通大臣賞を受賞しています。

ここでも、

古いものをただ保存する

という発想ではありませんでした。

昔の建築が持っている良さと、

現在求められる暮らし。

その二つをどうつなぐのか。

を考えました。

古民家再生では、

過去を尊重しながら、現在の建築として成立させること

が必要です。


古民家は「住宅」以外にも使える

古民家というと、

住宅として再生する

という選択がまずあります。

でも建物によっては、

宿泊施設。

飲食店。

カフェ。

事務所。

ギャラリー。

地域の交流施設。

小規模な店舗。

など、別の用途へ変える可能性があります。

ここで重要になるのが、

「今まで何に使われていたか」ではなく、「これから何に使えるか」

という視点です。

これを用途転換と考えることができます。

空き家の問題も、

住宅として使う人がいないから価値がない

のではなく、

別の使い方をまだ発見できていない

場合があります。


築70年の工場も、用途を変えれば再び使える

これは古民家だけの話ではありません。

愛知県一宮市の「森と川に咲く花」は、築70年の織物工場をリノベーションした建物です。

【建築事例】森と川に咲く花

工場としての役割は終わっていました。

でも、

大きな空間。

既存構造。

素材。

地域に残ってきた時間。

はありました。

そこで、

コワーキング。

カフェ。

会議。

展示。

イベント。

学び。

などが行われる場所へ変えました。

つまり、

用途の寿命と、建築そのものの寿命は必ずしも同じではありません。

これは古民家や空き家を考えるときにも、とても重要な視点です。


空き家だから「負債」と決めるのは早い

使われない建物には、

固定資産税。

修繕。

草木の管理。

防犯。

雨漏り。

劣化。

などの負担があります。

放置すれば、確かに負債になっていきます。

でも、

使われていないことと、価値がないことは同じではありません。

構造が使える。

庭が残っている。

立地に可能性がある。

地域の特徴がある。

別用途に変えられる。

なら、選択肢は残っています。

資産価値の本質⑥|空き家は本当に負債なのか

まず必要なのは、

「いくらで直せるか」

より前に、

「この建物に何が残っているか」

を見ることです。


もちろん、残さない方がよい古民家もある

古民家再生を仕事にしているからといって、

すべて残すべきだとは考えていません。

例えば、

構造的な問題が大きい。

劣化が激しい。

現在の用途にまったく対応できない。

法的な問題がある。

改修費が目的に対して大きすぎる。

将来的な使い方が成立しない。

のであれば、建替えという判断もあります。

だから私は、

「古いから価値がある」のではなく、「何に価値があるのか」を見極める

ことが大切だと思っています。

建替えか、リノベーションか|築古建物の「残す価値」を考える


古民家再生では、最初に構造・法規・事業を見る

古民家を活用したいと思ったとき、

すぐに内装デザインを考えるのはおすすめしません。

先に確認したいのは、

建物の状態。

構造。

耐震性。

雨漏り。

設備。

敷地条件。

道路。

法規。

そして、

何に使うのか。

です。

住宅から宿泊施設へ変える場合。

住宅から店舗へ変える場合。

事務所へ変える場合。

用途が変われば必要な条件も変わります。

だから古民家再生は、

単なるリフォームではなく、

建物と事業の両方を読み直す仕事

になります。


「昔らしく見せること」が古民家再生ではない

古民家らしい雰囲気をつくるために、

古材風の材料を増やす。

和風の装飾を足す。

昔らしいものを並べる。

という方法もあります。

でも私は、

その建物にもともとあるものが強ければ、

無理に「古民家らしさ」を演出しなくてもよい

と思っています。

むしろ、

新しい部分と古い部分の違いを素直に見せる。

現在必要なものは現在のものとして入れる。

その方が、

建物が経てきた時間がはっきり見える

場合があります。


地域材を使うことも、地域との関係をつくる一つの方法

愛知・岐阜には、木の文化があります。

東濃檜をはじめとした木材。

職人。

木工。

建具。

庭。

さまざまな技術があります。

古民家そのものだけでなく、

改修の中で地域の材料や技術を次へつなぐこともできます。

私は新築でもリノベーションでも、

その場所だから使えるものがないか

を考えます。

地域性は、飾りではありません。

建築をその土地へ結び付ける要素です。


一棟の古民家が、地域活性化を保証するわけではない

ここも重要です。

古民家をきれいに再生すれば、

観光客が来る。

地域が活性化する。

売上が増える。

という単純な話ではありません。

場所。

運営。

用途。

価格。

サービス。

発信。

地域との関係。

など、さまざまな条件があります。

建築だけで地域活性化を保証することはできません。

ただ、

使われなくなった建物に、

新しい人が訪れる。

地域の人が集まる。

仕事が生まれる。

外から来た人がその土地を知る。

という小さな変化をつくることはできます。

私は、

地域活性化を大きな言葉として掲げるより、一つの建物をもう一度使われる場所へ戻すこと

から始めたいと思っています。


古民家再生の価値は、「文化」だけでも「収益」だけでもない

古民家を残すことに文化的な意味があっても、

誰も使わず、

維持できなければ、

長く残すことは難しくなります。

反対に、

収益性だけを求めて建物の特徴をすべて消してしまえば、

古民家を使う意味そのものが薄れることもあります。

だから必要なのは、

文化的価値と、現在の使い方を両立させること。

です。

私はそこに、

古民家再生の面白さと難しさがあると思っています。

資産価値の本質⑦|なぜ古民家再生は地域資産になるのか


「文化投資」という言葉を使うなら

私は、古民家再生を「文化投資」と考えることがあります。

ただし、

文化だから採算を考えなくてよい

という意味ではありません。

長く残すためには、

使われなければなりません。

管理できなければなりません。

場合によっては、事業として成立する必要もあります。

だから文化投資とは、

昔のものへお金を使うことではなく、その土地が持つ文化を、現在も使える価値へ変えること

だと考えています。


建物を残すだけでなく、「記憶」を次へ渡す

古民家には、

そこで育った人。

食事をした人。

庭を眺めた人。

家族が集まった人。

の時間があります。

建築を残すということは、

すべての記憶を保存することではありません。

でも、

柱。

庭。

建具。

光。

空間の関係。

の中に残る時間を、

次の使い手が感じられる形にすることはできます。

建築は、時間を受け渡すことができる。

私はそこに、古民家再生の大きな価値を感じています。


新築か、再生か。答えは建物ごとに違う

これまで、

築70年の日本家屋。

築60年の移築古民家。

築70年の工場。

などを扱ってきました。

一方で、新築の建築も数多く設計しています。

つまり私は、

リノベーションだから良い。

新築だから良い。

とは考えていません。

その場所にすでにあるものを使うべきか。
新しくつくるべきか。

そこから考えます。

人も、場所も、目的も違う。

だから、建築の答えも一つではありません。


古民家・空き家活用を考えるときの5つの視点

古民家や空き家について相談を受けたとき、私は大きく5つを見ます。

1.建物として残せるか
構造・劣化・耐震性・設備など。

2.何を残す価値があるか
庭、梁、建具、空間、素材、地域との関係など。

3.何に使えるか
住宅、宿泊、店舗、事務所、地域施設など。

4.事業として維持できるか
初期費用だけでなく、運営や維持管理も含めて考える。

5.新築と比較してどうか
感情だけで残すのでも、古いから壊すのでもなく比較する。

この5つを重ねて、

初めて「残すか、変えるか、建替えるか」を考えます。


建築相談カフェ|古民家をどうするか決まっていなくても構いません

梶浦博昭環境建築設計事務所では、愛知県一宮市を拠点に、名古屋・愛知・岐阜・三重を中心として、

古民家再生。

空き家活用。

既存住宅。

宿泊施設。

店舗。

オフィス。

既存工場。

用途転換。

建替え。

新築。

などを設計しています。

「相続した古民家をどうしたらよいか分からない」

「空き家を店舗や宿泊施設に使えないか」

「古い家を残したいが、改修費が心配」

「古民家を壊すべきか迷っている」

「事業として使える可能性を知りたい」

「どこまで残せるのか一度見てほしい」

という段階からでも構いません。

残すと決めてから相談する必要はありません。

残す。

部分的に使う。

用途を変える。

建替える。

その比較から一緒に考えます。

梶浦博昭環境建築設計事務所では、建物をつくる前から相談できる**「建築相談カフェ(90分・無料)」**を行っています。

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