「空間戦略から考える資産価値の本質⑨」 なぜ立地が良くても選ばれないのか「ひとりごアート」

「空間戦略から考える資産価値の本質⑨」 なぜ立地が良くても選ばれないのか「ひとりごアート」

不動産価値と空間価値の決定的な違い

― 建築をコストではなく「未来資産」として考える経営戦略 ―

【導入】

「駅前だから集客できる。」「人気エリアだから空室は出ない。」「新築だから選ばれる。」

本当にそうでしょうか。名古屋・愛知県・岐阜県・三重県でも、立地条件に恵まれながら苦戦する店舗や、空室が続く収益不動産は決して珍しくありません。

一方で、駅から離れた場所でも予約が取りにくい飲食店や宿泊施設があります。

築年数が古くても、多くの人に愛され続ける古民家再生の事例もあります。

採用に苦戦していた企業が、オフィス設計を見直したことで応募者が増えたケースもあります。

この違いは、どこから生まれるのでしょうか。

私は建築家として25年以上、住宅をはじめ、商業施設設計、オフィス設計、クリニック リノベーション、宿泊施設 リノベーション、古民家再生まで、多くの建築に携わってきました。

その経験を通して確信したことがあります。人は建物を選んでいるのではありません。そこで得られる体験を選んでいるのです。

これからの時代、企業が競争力を高めるために必要なのは、単なるデザインではありません。

私は、それを「空間戦略」と呼んでいます。

空間戦略とは、人の感情や行動を設計し、資産価値向上・企業価値向上・採用力向上・集客力向上へとつなげる経営戦略そのものです。

本記事では、「不動産価値」と「空間価値」の違いを整理しながら、なぜ建築が利益を生み、地域に愛され、企業の未来を変えるのかを、国内外の研究や実務経験を交えて解説します。

【 共感・現状の言語化】

経営者や不動産オーナーから、次のような相談を受けることがあります。

「家賃を下げても入居が決まらない。」

「店舗を改装したのに売上が伸びない。」

「求人を出しても応募が来ない。」

「リノベーション投資をしたが期待した成果が出ない。」

だからといって、広告費を増やし、さらに価格を下げる。

しかし、その対策を繰り返しても、根本的な解決にはつながらないことが少なくありません。

その理由は、「建物」というハードだけを改善し、「人がその場所で何を感じるか」というソフトを設計できていないからです。

現代はモノが不足する時代ではありません。情報も、商品も、サービスもあふれています。

だからこそ、人は「何を買うか」ではなく、「どんな体験を得られるか」で意思決定をしています。

建築も例外ではありません。

【 原因の再定義】

ここで、一つ整理しておきたいことがあります。

それは、「不動産価値」と「空間価値」は同じではないということです。

不動産価値とは、立地や面積、築年数、市場環境などによって評価される価値です。

つまり、市場が決める価値です。

一方、空間価値とは、その場所で人が感じる安心感、居心地の良さ、期待感、信頼感、そして「また来たい」と思う感情によって生まれる価値です。

こちらは市場ではなく、設計によって育てることができます。

私は、この違いこそが、これからの建築投資や不動産経営において最も重要な視点だと考えています。

建築は建物を造る仕事ではありません。

人の感情を設計し、未来の価値を育てる仕事です。

だから私は、建築家ではありますが、「空間戦略家」という視点を大切にしています。

【 一般解の否定】

もちろん、設備更新やデザインの刷新は大切です。

しかし、「おしゃれだから選ばれる」「新築だから利益が出る」という時代は終わりつつあります。

実際、世界では人間心理と建築の関係について多くの研究が進んでいます。

例えば、自然光や景観への配慮は、利用者のストレス軽減や満足度向上につながることが医療施設やオフィス環境の研究で数多く報告されています。

また、室内空気質や換気性能の改善は、集中力や認知機能、生産性の向上に寄与することも明らかになっています。

つまり、人は「美しい建物」に反応しているのではありません。

「心地良い体験」を提供してくれる空間に反応しているのです。

だからこそ、これからの差別化はデザイン競争ではなく、「体験価値」の競争へと変わっていきます。

【新しい視点の提示】

私は、この考え方を「空間戦略」と呼んでいます。

人が集まり、働きたくなり、また訪れたくなり、地域に愛される構造そのものを設計することです。

例えば、

・店舗では「また来たい」と思わせる体験価値を育てる。

・オフィスでは、採用力向上や人材定着、生産性向上につながる環境を整える。

・クリニックでは、不安を安心へ変える空間をつくる。

・宿泊施設では、「泊まる」ではなく、「記憶に残る時間」を提供する。

・古民家再生では、地域の歴史や文化を未来へ受け継ぐ物語をつくる。

これらは単なる設計手法ではありません。

企業価値向上、不動産価値向上、店舗ブランディング、オフィスブランディングへとつながる「経営価値設計」です。

これからの建築は、「何を建てるか」ではなく、「どのような未来を育てるか」が問われる時代です。

【 具体】

空間価値は、特別な設備や高価な素材だけで生まれるものではありません。

人がどのように歩き、どこで立ち止まり、何を見て、何を感じるのか。

その一つひとつを丁寧に設計することで、建築は「体験価値」を生み出します。

例えば商業施設設計では、入口から席までの動線がスムーズであることはもちろん、途中で景色が開けたり、木の香りを感じたり、自然光が差し込んだりすることで、お客様は無意識のうちに安心感を抱きます。

オフィス設計では、社員同士が自然に会話できる距離感や、集中できる静かな場所、気分転換できる余白のある空間が、生産性向上や人材定着につながります。

クリニック リノベーションでは、診察を待つ時間そのものが患者にとって不安な時間です。

受付から診察室までの動線、光の入り方、木質空間の温もり、窓から見える緑などは、その不安を和らげる重要な要素になります。

宿泊施設 リノベーションでは、宿泊すること自体ではなく、「ここで過ごした時間が忘れられない」という記憶を設計することが求められます。

古民家再生においても同じです。

古い建物を残すことが目的ではありません。

その土地の歴史や文化、人々の記憶を未来へ受け継ぎ、新たな価値として再編集することこそ、本当のリノベーション投資だと私は考えています。

建築は、図面を描く仕事ではありません。人の感情を動かす舞台を設計する仕事なのです。

【事例:見える化した調剤薬局が生む「信頼という価値」 空間ブランディングが変える医療経営とリノベーション戦略】

【 収益・経営への接続】

では、なぜ空間は利益を生むのでしょうか。

答えは、人間心理にあります。

人は安心できる場所に長く滞在します。

心地良い場所を誰かに紹介したくなります。

働きやすい環境では、人材が定着しやすくなります。

居心地の良い店舗では、価格だけで比較されにくくなります。

つまり、利益は建物から生まれるのではありません。

空間が変えた人の行動から生まれるのです。

近年では、自然光や景観、木質空間、室内空気質などが利用者の満足度や集中力、ストレス軽減に影響することが国内外の研究で数多く報告されています。

私は、こうした研究結果を「建築の目的」ではなく、「経営成果につながる根拠」として捉えています。

建築投資とは建物を建てることではありません。

企業価値向上、採用力向上、生産性向上、集客力向上、不動産価値向上を実現するための未来への投資なのです。

【 地域性】

名古屋・愛知県・岐阜県・三重県では、人口減少や人材不足、地域間競争がこれまで以上に進んでいます。

これからは立地だけでは選ばれません。

価格だけでも選ばれません。

だからこそ、商業施設設計、オフィス設計、クリニック リノベーション、宿泊施設 リノベーション、古民家再生において、「その場所にしかない価値」を設計することが重要になります。

例えば、地域の風景を取り込む窓の配置。

地域材を活用した木質空間。

地域文化を体験できる空間づくり。

これらは単なるデザインではありません。

地域ブランドそのものを育てる「空間戦略」です。

一つの建物が地域の魅力を高め、人の流れを生み、周辺にも良い影響を与える。

私は、建築にはそのような社会的な役割があると考えています。

【未来提案】

これからの建築は、「建物を設計する時代」から、「未来を設計する時代」へ変わります。

私が考える空間戦略とは、

人の感情を設計し、企業の未来と地域の未来を同時につくる経営戦略です。

建築は完成した瞬間がゴールではありません。

そこから始まる人との出会い。

地域とのつながり。

企業の成長。

そのすべてを支える基盤が建築です。

利益を追いかけるためだけではなく、人が誇りを持ち、地域が元気になり、次の世代へ価値を受け継ぐ。

そのような未来をつくることが、空間戦略家の役割だと私は考えています。

【まとめ】

本記事のポイントを整理します。

・不動産価値は市場が決める価値である。

・空間価値は人の感情によって育まれる価値である。

・建築価値とは、その二つを結び付け、企業や地域の未来へつなげる価値である。

・差別化とは、高価な建物をつくることではなく、「選ばれる理由」を設計することである。

・空間戦略とは、デザインではなく、人・経営・地域をつなぐ経営戦略である。

つまり、建築をコストとして考えるか、未来資産として考えるかで、その後の経営は大きく変わります。

【 行動喚起】

もし今、

「価格競争から抜け出したい。」

「空室対策を根本から見直したい。」

「採用力を高めたい。」

「企業価値やブランド力を高めたい。」

「地域に愛される店舗や施設をつくりたい。」

そのように考えているのであれば、一度「空間戦略」という視点から建築を見直してみてください。

私は建築家として、建物を設計するだけではなく、人が集まり、働きたくなり、地域に愛され、未来へ価値が受け継がれる「選ばれる構造」を設計したいと考えています。

建築は、図面を完成させる仕事ではありません。

人の感情を動かし、企業を成長させ、地域の未来を育てる「未来資産」をつくる仕事です。

これから建築やリノベーションをご検討される際は、「どんな建物を建てるか」だけではなく、「どんな未来をつくりたいのか」という視点から考えてみてはいかがでしょうか。

その答えの中にこそ、本当の資産価値が生まれると、私は信じています。

【ご相談について】

事業の成長につながる空間戦略について、ご相談を承っております。

・店舗、宿泊施設、オフィスの再構築
・新規事業における空間戦略
・既存施設の価値向上

・体験価値を収益につなげるには、空間全体の設計が重要になります。こちらで整理しています。https://kajiura-a.com/archives/blog/19754

・設計事務所の選び方 紹介で25年つづいてきた理由。こちらで整理しています。https://kajiura-a.com/archives/blog/19721

・なぜ私は住宅もオフィスもクリニックも店舗も宿泊施設も設計するのか。こちらで整理しています。https://kajiura-a.com/archives/blog/19956

・問い合わせ https://kajiura-a.com/contact/

梶浦博昭環境建築設計事務所 https://kajiura-a.com/ 『空間 × 感性 × 経営』

~ 見えない価値を、設計する~【名古屋・愛知・岐阜・三重を中心に25年の実績】

建築家 梶浦博昭|note   インスタ kajiuraarchitect

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