建築の資産価値は何で決まるのか|新築・リノベーション・土地活用を「未来資産」にする9つの視点「ひとりごアート」

建築の資産価値は何で決まるのか|新築・リノベーション・土地活用を「未来資産」にする9つの視点「ひとりごアート」

同じ建築費をかけても、10年後の価値は同じなのでしょうか

建築を考えるとき、

「いくらで建てられるか」

は当然重要です。

でも私は、もう一つ考えたいと思っています。

「その建築は、10年後、20年後にどんな価値を残しているだろうか。」

同じ5000万円を使った建物でも、

長く使われる建物。

数年で使いにくくなる建物。

人が集まり続ける建物。

空室になる建物。

次の用途へ変えられる建物。

取り壊すしかない建物。

があります。

つまり、

建築費と資産価値は、同じものではありません。

では、建築の資産価値は何によって決まるのでしょうか。

私はこれまで「空間戦略から考える資産価値の本質」というシリーズで、この問題をさまざまな角度から考えてきました。

今回は、その全体を一度まとめてみます。


資産価値は「建物の値段」だけではない

不動産の資産価値というと、

土地価格。

建物価格。

利回り。

家賃。

築年数。

を思い浮かべます。

もちろん非常に重要です。

でも実際に建物を設計し、既存建築を改修し、自分自身でも建物を運営していると、それだけでは説明できない価値があることに気づきます。

例えば、

人がまた訪れたいと思う。

社員がここで働きたいと思う。

入居者が長く住みたいと思う。

地域の人がその建物を必要とする。

別の用途になっても使い続けられる。

時間とともに素材や庭が魅力を増す。

こうしたものも、

建物が長く価値を持つための条件

ではないでしょうか。


① なぜ、同じ建物でも価値に差が生まれるのか

同じ面積。

同じ構造。

同じような建築費。

それでも、建物の価値には差が出ます。

なぜでしょうか。

私は、

「誰にとって、どんな理由で必要とされる建物なのか」

が違うからだと思っています。

立地や性能だけでなく、

使いやすさ。

居心地。

地域との関係。

用途への適合性。

将来変更できる余地。

その場所でしか得られない体験。

こうしたものが重なって、建物の価値をつくります。

空間戦略から考える資産価値の本質①|なぜ同じ建物でも価値に差が生まれるのか


② 建築費ではなく「未来に残るもの」から考える

安く建てることは重要です。

でも、

安くした結果、

すぐに使いにくくなる。

改修しにくい。

魅力がなくなる。

数年でまた手を入れる。

のであれば、長期的には別の見方が必要になります。

反対に、

少し余白を残す。

長く使える素材を選ぶ。

将来変更できる構造にする。

重要な場所へ予算を集中する。

ことで、その建築が長く働くこともあります。

だから、

建築費を「完成時の金額」だけで判断しない。

という視点が必要です。

資産価値の本質②|なぜ建築費ではなく「未来に残る資産価値」で考えるべきなのか

建築投資の費用対効果については、こちらの記事でもさらに具体的に整理しています。

建築投資の費用対効果|店舗・オフィス・リノベーションを経営資産にする


③ リノベーションは「安く直すこと」ではない

リノベーションというと、

新築より安い方法

と思われることがあります。

でも、本来の価値はそこだけではありません。

既存建物には、

構造。

時間。

素材。

庭。

地域との関係。

すでに存在する空間。

があります。

それらを次の用途へ使えるなら、

新築では一からつくらなければならない価値を、すでに持っている

とも言えます。

築70年の織物工場を再生した「森と川に咲く花」は、その一例です。

【建築事例】森と川に咲く花

資産価値の本質③|なぜリノベーションは投資になるのか

既存建築・リノベーションの実例はこちらにもまとめています。

リノベーション・既存建築再生


④ 収益不動産は、なぜ家賃競争に入ってしまうのか

賃貸住宅や収益不動産では、

家賃。

立地。

築年数。

広さ。

設備。

で比較されます。

条件がほぼ同じなら、価格競争になりやすくなります。

だからこそ、

「この物件を選びたい理由」があるか

が重要になります。

愛知県小牧市の6棟の戸建て型賃貸住宅では、建物を一棟へまとめず、それぞれを離して配置しました。

【建築事例】小牧市・6棟の戸建て型賃貸住宅

その間に、

視線の距離。

外部空間。

緑。

プライバシー。

戸建てらしい暮らし。

が生まれます。

土地の面積を使い切ることと、

入居者に選ばれる価値を最大化することは、同じではありません。

資産価値の本質④|なぜ収益不動産は家賃競争に陥るのか


⑤ 人が集まる建物は、なぜ価値を保ちやすいのか

建物の価値は、建物だけで完結するものではありません。

使う人がいる。

訪れる人がいる。

働く人がいる。

必要とする人がいる。

その関係が続いていることも重要です。

だから私は、

「人が集まる」という結果ではなく、「なぜ人がそこを選ぶのか」

を見ます。

店舗なら、また訪れたい理由。

オフィスなら、働きたい理由。

クリニックなら、安心して利用できる理由。

住宅なら、住み続けたい理由。

人がどこを自分の居場所にするのかについても、別の記事で考えています。

人が集まり続ける場所のつくり方|店舗・オフィス・クリニックの居場所設計

資産価値の本質⑤|なぜ人が集まる建物は価値が下がらないのか


⑥ 空き家は、本当に「負債」なのでしょうか

使われていない建物には、

固定資産税。

維持管理。

修繕。

防犯。

などの負担があります。

その意味では、空き家が負担になることはあります。

でも、

使われていない=価値がない

とは限りません。

構造が残っている。

庭がある。

地域との関係がある。

立地に可能性がある。

別の用途へ転換できる。

のであれば、見方は変わります。

重要なのは、

「空き家をどう直すか」

より先に、

「この建物を何に使えるのか」

を見ることです。

資産価値の本質⑥|空き家は本当に負債なのか


⑦ 古民家再生は、建物だけの価値ではない

愛知県稲沢市では、築70年の日本家屋を宿泊施設へ再生しました。

【建築事例】築70年日本家屋の宿泊施設再生

古民家には、

柱。

梁。

建具。

庭。

光。

地域の記憶。

があります。

古いものを残せば価値になるわけではありません。

でも、

その建物にしかない時間を、現在の使い方へつなげられる

なら、新築とは違う価値になります。

宿泊。

店舗。

住宅。

地域施設。

用途はさまざま考えられます。

古民家再生は、

過去を保存することだけではなく、

過去の資産を次の事業へ渡すこと

でもあります。

資産価値の本質⑦|なぜ古民家再生は地域資産になるのか


⑧ 同じ建築費なのに、なぜ資産価値に差が生まれるのか

例えば5000万円の建築費を、

すべての場所へ均等に使うのか。

重要な場所へ集中するのか。

では結果が変わります。

店舗なら、

アプローチ。

客席。

庭。

オフィスなら、

働き方を変える場所。

来客が会社を感じる場所。

クリニックなら、

患者・スタッフ動線。

既存建築なら、

残すべき部分。

建築費の問題は、

「高いか安いか」だけではなく、「何のためにどこへ使ったか」

です。

春日井市の「蕎席 雅山」では、直接席数にはならない庭やアプローチにも大きな意味を持たせています。

【建築事例】蕎席 雅山

資産価値の本質⑧|なぜ同じ建築費なのに資産価値に差が生まれるのか


⑨ 立地が良くても、選ばれない建物はある

立地は非常に大きな価値です。

でも、

立地がよい=必ず選ばれる

わけではありません。

反対に、

一般的には弱い条件を持つ土地でも、その条件を建築によって読み替えられることがあります。

雅山は国道19号沿いです。

静かな蕎麦懐石の店には、道路の存在が大きすぎる条件でした。

そこで、

道路の便利さだけを使うのではなく、

庭。

アプローチ。

山への視線。

によって、

日常から食事の時間へ切り替える体験

をつくりました。

飲食店・店舗設計|立地の弱点を「選ばれる理由」に変える

資産価値の本質⑨|なぜ立地が良くても選ばれないのか


そして、「未来資産」という考え方へ

このシリーズを考えていく中で、私は建築を、

「完成したもの」ではなく、時間の中で価値を育てていくもの

として、より強く見るようになりました。

新築。

リノベーション。

用途転換。

土地活用。

どれが正しいという話ではありません。

重要なのは、

その建築が将来も使われる理由を持てるか。

です。

この考えについては、スクラップ・アンド・ビルドへの違和感から、別の記事で詳しく書いています。

建築は、時間を設計する仕事|スクラップ・アンド・ビルドから「未来資産」へ


資産価値を考えるとき、私は5つの時間軸を見る

ここまでのシリーズを改めて整理すると、私は建築の資産価値を少なくとも5つの時間軸で見ています。

1.完成時
必要な性能・機能・予算を満たしているか。

2.使い始めてから
人が実際に使いやすいか。運営に合っているか。

3.数年後
事業や働き方の変化に対応できるか。

4.10年、20年後
素材、庭、空間が時間とともに価値を持てるか。

5.次の使い手へ渡るとき
用途変更、リノベーション、事業承継ができるか。

資産価値とは、

今いくらか

だけではなく、

時間の中で、何を受け止められる建築なのか

という見方も必要だと思っています。


「価値が下がらない建築」を保証することはできない

ここは明確にしておきます。

建築家が設計したから、

不動産価格が上がる。

売上が増える。

空室がなくなる。

資産価値が必ず維持される。

とは言えません。

市場。

立地。

金利。

人口。

経営。

管理。

建物の状態。

さまざまな要因があります。

だから私が考えるのは、

価値を保証することではなく、長く使われ、選ばれる可能性を高める設計をすること

です。

この違いは重要です。


新築かリノベーションかも、「資産価値」から比較する

古い建物がある場合、

「リノベーションの方が環境に良いから残す」

だけで判断することはしません。

構造。

耐震。

劣化。

設備。

事業。

費用。

将来用途。

を見ます。

新築した方が長期的に合理的なら、新築を選ぶこともあります。

反対に、

まだ価値のある既存建物を、

古いという理由だけで壊す必要もありません。

建替えか、リノベーションか|「残す価値」を判断する5つの視点

残すことも、壊すことも目的ではありません。

その場所の将来にとって、どちらがよいかを考えます。


建築の資産価値を高める最初の質問

設計を始めるとき、

「何㎡必要ですか」

「予算はいくらですか」

という質問は必要です。

でも、その前後でもう一つ聞きたいことがあります。

「この建築に、将来どんな価値を残したいですか。」

集客かもしれません。

働く環境かもしれません。

医療の継承かもしれません。

土地収益かもしれません。

地域との関係かもしれません。

建物そのものを次世代へ残すことかもしれません。

目的が違えば、設計も変わります。

だから、

人も、場所も、目的も違う。
建築の答えも一つではありません。


建築相談カフェ|まだ新築かリノベーションか決まっていなくても構いません

梶浦博昭環境建築設計事務所では、愛知県一宮市を拠点に、名古屋・愛知・岐阜・三重を中心として、

既存建築・築古建築の活用。

店舗。

オフィス・自社ビル。

クリニック。

宿泊施設。

古民家再生。

土地活用・賃貸住宅。

住宅。

新築。

リノベーション。

用途転換。

などを設計しています。

「相続した土地をどう使えばいいか」

「古い自社ビルを建替えるべきか」

「空き家を事業に使えないか」

「収益物件を価格競争から離したい」

「建築費をかけるなら、長く価値が残るものにしたい」

という段階からでも構いません。

建てることだけを、答えにしない。

土地と建物の現在の価値を見ながら、将来の選択肢まで一緒に考えます。

梶浦博昭環境建築設計事務所では、建物をつくる前から相談できる**「建築相談カフェ(90分・無料)」**を行っています。

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