なぜ建築家に「経営」から相談するのか|建物を決める前に考える空間戦略「ひとりごアート」

なぜ建築家に「経営」から相談するのか|建物を決める前に考える空間戦略「ひとりごアート」

建築家への相談は、「何を建てるか」が決まる前でもいい

「店舗をつくりたい。でも、何坪必要なのか分からない」

「オフィスを改修したいが、本当に今やるべきなのか」

「古い建物を持っている。壊すべきか、活かすべきか」

「クリニックを改修したいが、どこから手を付ければいいのか」

「相続した土地があるが、何を建てればよいのか分からない」

こうした相談があります。

一般的には、

土地が決まる。

用途が決まる。

面積が決まる。

予算が決まる。

そして最後に、設計事務所へ相談する。

と思われているかもしれません。

でも私は、もっと前から建築家が関わってよいと思っています。

なぜなら、本当に最初に考えたいのは、

「何を建てるか」ではなく、「建築によって何を変えたいのか」

だからです。


経営者の悩みは、最初から「建築の悩み」とは限らない

実際の相談は、建物の話から始まらないことがあります。

人が採れない。

店の魅力が伝わらない。

社員同士の交流が少ない。

患者さんにもっと安心してもらいたい。

古い不動産をどう活用すればよいか分からない。

事業承継を機に会社や医院を変えたい。

これは一見すると、

人事。

営業。

マーケティング。

経営。

不動産。

の問題です。

しかし、話を聞いて現場を見ると、

入口の位置。

人の動き。

人と人との距離。

見えるものと、見えないもの。

働く環境。

待つ環境。

空いている場所。

使われていない場所。

建物と地域との関係。

など、空間とつながっている問題が見えてくることがあります。

経営課題の一部が、実は空間の構造とつながっている。

そこに、建築家が早い段階から関わる意味があります。


「オフィスをきれいにしたい」の奥に、別の目的があるかもしれない

例えば、古くなったオフィスを改修するとします。

床を張り替える。

壁を塗る。

照明を替える。

家具を新しくする。

それだけでも、きれいにはなります。

でも、

「なぜオフィスを改修したいのですか」

と聞くと、話が変わることがあります。

採用を強くしたい。

社員に長く働いてほしい。

部署間の交流を増やしたい。

会社らしさを来客へ伝えたい。

事業承継を機に、会社の次の姿をつくりたい。

そうであれば、設計するのは仕上げだけではありません。

会社の価値や働き方を、空間へどう表すか。

から考える必要があります。

愛知県稲沢市のオフィス「柔らかい水」でも、会社らしさをロゴや色だけで表現するのではなく、企業の考え方を建築へどう翻訳するかを考えました。

愛知のオフィス設計|「会社らしい建物」とは何か


クリニックなら、「内装」より先に診療と動線を見る

クリニックでも同じです。

壁や床が古くなったから改修する。

それだけでは、本当に必要な改善にならない場合があります。

受付。

待合。

診察。

処置。

スタッフ動線。

患者動線。

物品の移動。

診療内容の変化。

院長の代替わり。

森整形外科では、築36年の既存建物を前に、内装より先にこうした関係を読み直しました。

きれいにすることより、「これからどんな医院にするのか」を考える。

そこからリノベーションを組み立てています。

クリニックのリノベーションは、内装を新しくすることではない


店舗なら、「何席入るか」だけでは店の価値は決まらない

飲食店では、

何席入るか。

厨房を何㎡にするか。

回転率をどうするか。

という数字が重要です。

もちろん、経営上欠かせません。

でも、

なぜその店へ行くのか。

なぜ少し遠くても選ぶのか。

なぜまた来たくなるのか。

は、席数だけでは決まりません。

入口までの体験。

人との距離。

光。

庭。

素材。

視線。

料理を待つ時間。

店を出るときに残る記憶。

こうしたものも店舗の価値になります。

春日井市の「蕎席 雅山」では、国道19号沿いという条件から、逆に店内の静けさを強く感じられる建築を考えました。

飲食店・店舗設計|立地の弱点を「選ばれる理由」に変える

店舗コンセプトをどうつくるかについてはこちらでも書いています。

店舗設計のコンセプトはどう生まれるのか


古い建物なら、「壊すか残すか」より先に価値を見る

既存建物の相談では、

「築年数が古いから、もう壊した方がいいですよね」

という話になることがあります。

でも築年数だけでは決めません。

構造。

耐震性。

建物の状態。

これからの用途。

改修費。

建替え費。

事業性。

そして、その建物にしか残っていない時間や素材。

それらを見ます。

築70年の工場を再生した「森と川に咲く花」は、その一例です。

【建築事例】築70年の繊維工場を再生した「森と川に咲く花」

古いから残したのではありません。

使い方を変えれば、この建物はもう一度価値を生み出せるのではないか。

と考えました。

現在は、コワーキング、カフェ、会議、展示、学びなど、工場時代とはまったく違う場所として使われています。

リノベーション・既存建築再生の事例を見る

建替えとリノベーションの判断についてはこちらで整理しています。

建替えか、リノベーションか|「残す価値」を判断する5つの視点


私が考える「空間戦略」は、難しいものではない

私は「空間戦略」という言葉を使っています。

でも、難しい経営理論のことではありません。

簡単に言えば、

事業の目的から、空間に何ができるかを考えること。

です。

会社なら、

どんな会社になりたいのか。

どんな人に働いてほしいのか。

店舗なら、

誰に来てほしいのか。

どんな時間を過ごしてほしいのか。

医院なら、

どんな医療を行いたいのか。

患者さんやスタッフに、どう感じてほしいのか。

既存建物なら、

何を残し、何を変えれば、次の用途へつながるのか。

土地なら、

何戸入るかより先に、その土地にはどんな可能性があるのか。

つまり、

建物の形を決める前に、人・事業・場所・将来を考える。

それが、私の考える空間戦略です。


建築は、経営そのものではない

ここは大切なので、はっきり分けて考えています。

建築が、

売上を上げる。

患者数を増やす。

採用を成功させる。

空室をなくす。

と単純に言うことはできません。

事業には、多くの要因があります。

商品。

サービス。

医療。

接客。

価格。

立地。

採用条件。

運営。

経営者の判断。

建築は、その一つです。

でも建築は、

人が何を感じ、どう動き、何を選ぶか

に影響することがあります。

店舗なら、

「また来たい」。

オフィスなら、

「ここで働きたい」。

医院なら、

「ここなら安心できそう」。

宿泊施設なら、

「ここに泊まりたい」。

不動産なら、

「ここを借りたい」。

そうした一つひとつの選択を支える環境をつくることはできます。

建築は経営そのものではない。
でも、経営を支える環境にはなれる。

私はそう考えています。


建築費を見る前に、「何を変えるための投資なのか」を考える

建築では、大きなお金が動きます。

だから工事費は重要です。

ただ、

「いくらかかるか」

だけでなく、

「何のために、そのお金を使うのか」

を見る必要があります。

100万円安くする。

100㎡増やす。

1席増やす。

それだけでは、その投資がよかったかどうかは判断できません。

その場所が長く使えるのか。

事業の変化へ対応できるのか。

人に選ばれる理由になるのか。

建物そのものの価値が残るのか。

必要のないところへお金を使っていないか。

建築投資は、「建物を買うこと」ではなく、「これからの事業環境をつくること」でもあります。

だから私は、設計を始める前の判断を大切にしています。


地域にすでにあるものを、事業の価値にできないか

愛知・岐阜・三重には、多くの既存資産があります。

工場。

倉庫。

古民家。

地域企業の本社。

庭。

農地。

木材。

ものづくりの技術。

地域に積み重なった記憶。

新しく何かを持ってくることだけが、差別化ではありません。

すでにそこにあるものを、別の価値として読み直す。

それが強い個性になる場合があります。

森と川に咲く花では築70年の工場。

雅山では東濃檜と里山の風景。

古民家再生では、長い時間を経た木、庭、建具。

それぞれ、別の場所へそのまま持っていくことはできません。

だからこそ、

その場所でしかつくれない建築

になります。


完成後を知ることで、設計の考え方も変わった

私は、自分で設計した「森と川に咲く花」の運営にも関わっています。

これは、設計者として大きな経験になりました。

人は、図面通りには動きません。

使い道を決めていなかった余白が、意外によく使われる。

人気になると思った場所が、そうならないこともある。

イベントで想定外の使い方が生まれる。

掃除や収納の小さな問題も見えてくる。

建築の本当の姿は、完成写真だけでは分かりません。

建物は完成してからの方が、圧倒的に長く使われる。

だから今は、

「完成したときどう見えるか」

だけではなく、

「完成後、この場所で何が起きるのか」

まで考えるようになりました。

建築家が自ら運営してわかったこと|建築は完成してから育っていく


結局、建築家に「経営」から相談するとはどういうことか

経営コンサルタントになるという意味ではありません。

建築家の仕事は、建築です。

ただ、建築をつくる前に、

なぜつくるのか。

何を変えたいのか。

誰のためにつくるのか。

何を残したいのか。

これから事業がどう変わるのか。

を聞く。

そして、

その目的に対して、建築という手段が何をできるのかを考える。

そこまでが設計だと思っています。

だから、

「店舗をつくる」

から始めるのではなく、

「なぜ、その店をつくるのか。」

「オフィスを改修する」

ではなく、

「会社を、これからどうしたいのか。」

「クリニックをきれいにする」

ではなく、

「これからどんな医療を行いたいのか。」

「古い建物を壊す」

ではなく、

「そこに残っている価値は、本当にもう使えないのか。」

そこから考えます。


人も、場所も、目的も違う。だから、建築の答えも一つではない

梶浦博昭環境建築設計事務所では、住宅だけでなく、

店舗。

オフィス。

クリニック。

宿泊施設。

寺院。

集合住宅。

既存建築のリノベーション。

など、用途の違う建築を設計しています。

完成した建物の形も違います。

それは、決まった作風を当てはめていないからです。

人も、場所も、目的も違う。
だから、建築の答えも一つではありません。

店舗には店舗の答えがある。

医院には医院の答えがある。

会社には会社の答えがある。

古い建物には、その建物にしかない答えがある。

その理由についてはこちらにも書いています。

なぜ住宅もオフィスもクリニックも店舗も宿泊施設も設計するのか


建てることが決まっていない段階から相談できます

建築家への相談は、

土地が決まってから。

建替えが決まってから。

リノベーションすると決まってから。

でなくても構いません。

例えば、

「この建物を残す価値があるのか見てほしい」

「会社の働き方を変えたいが、建築で何ができるのか知りたい」

「店を始めたいが、まだ必要な広さも分からない」

「医院の代替わりを機に、何を変えるべきか整理したい」

「相続した土地をどう使えばよいか分からない」

そんなところから始められます。

建築で解決できること。

建築では解決できないこと。

お金をかけるところ。

かけなくてもよいところ。

残すもの。

変えるもの。

新しくつくるもの。

を整理する。

設計は、図面を描く前から始まっています。


建築相談カフェ|事業と建築を一緒に整理するところから

梶浦博昭環境建築設計事務所では、愛知県一宮市を拠点に、名古屋・愛知・岐阜・三重を中心として、店舗、オフィス、クリニック、宿泊施設、住宅、集合住宅などの新築・リノベーション、既存建築活用、用途転換を設計しています。

まだ具体的な建物のイメージがなくても構いません。

一つひとつの建築に、その人だけの理由がある。
その想いに向き合い、建築を考える。

だから最初に、

何を建てたいのか。

ではなく、

何を実現したいのか。

から伺います。

梶浦博昭環境建築設計事務所では、建物をつくる前から相談できる**「建築相談カフェ(90分・無料)」**を行っています。

建築相談・お問い合わせはこちら


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