名古屋・愛知の飲食店・店舗設計|立地の弱点を「選ばれる理由」に変える「ひとりごアート」

名古屋・愛知の飲食店・店舗設計|立地の弱点を「選ばれる理由」に変える「ひとりごアート」

飲食店の価値は、立地だけでは決まらない

飲食店を考えるとき、

駅から近い。

人通りが多い。

景色がいい。

静かな場所にある。

そうした立地条件は、もちろん重要です。

でも、すべての店が理想的な場所に建つわけではありません。

交通量が多い。

周囲が落ち着かない。

景色がよくない。

敷地の形に癖がある。

そんな条件を持つ土地もあります。

私は店舗設計で、

「悪い条件をどう隠すか」だけではなく、「その条件だからこそ、どんな体験をつくれるか」

を考えます。

愛知県春日井市に設計した蕎席「雅山」も、そんな建築でした。

【建築事例】愛知県春日井市|蕎席 雅山


国道19号沿いに、「静かな時間」をつくる

雅山の敷地は、静かな山里の中ではありません。

車の往来が多い国道19号沿いです。

ロードサイドの店舗では、

道路からどう見えるか。

看板をどう見せるか。

駐車場へ入りやすいか。

といったことが重要になります。

もちろん雅山でも、それらは考えました。

しかし、もう一つ考えたことがあります。

店に入ってからも、ずっと「国道沿いにいる感覚」のままでいいのだろうか。

蕎麦懐石をいただきながら、ゆっくり時間を過ごす店です。

そこで、道路を完全に消すことより、

意識を別の方向へ向けること

を考えました。

店舗設計では、立地条件そのものを変えることはできません。

でも、

道路。

駐車場。

建物への入り方。

視線。

庭。

軒。

光。

それらを組み合わせることで、その場所の感じ方を変えることはできます。


道路を隠すのではなく、「もっと見たくなるもの」をつくる

雅山の建物は、円弧を描く平面になっています。

その円弧によって、客席からの視線を道路側ではなく、庭とその先の里山へ導いています。

深い軒。

その下の庭。

さらに向こうへ続く風景。

席に座ったとき、道路の存在が完全になくなるわけではありません。

でも、意識の中心から少しずつ外れていきます。

人は、

「見ないようにしよう」

と思うほど、かえって気になることがあります。

それなら、

もっと見たくなるものをつくる。

雅山では、その考えから建築、庭、軒、里山への視線を一体として組み立てました。

建築は、壁で何かを遮るだけではありません。
人の意識の向かう先をつくることもできます。


店へ入るまでの時間も、店舗設計の一部

飲食店の体験は、席に座ってから始まるわけではありません。

駐車場へ車を停める。

建物を見る。

庭へ入る。

軒の下を歩く。

入口へ向かう。

店内へ入る。

席へ案内される。

その一連の時間が、店で過ごす気持ちをつくっていきます。

雅山では、国道から店内へ一気に入るのではなく、庭や深い軒を通ることで、外の慌ただしさから少しずつ離れていくように考えました。

アプローチは、単なる入口までの通路ではありません。

日常から、その店の時間へ気持ちを切り替える場所にもなります。

これは、店舗設計で私が大切にしていることの一つです。


静けさは、「音がないこと」だけではない

静かな店というと、防音性能を高めることを想像するかもしれません。

もちろん音も大切です。

でも、私が考える静けさはそれだけではありません。

光が強すぎない。

視線が落ち着く。

木に触れたとき冷たくない。

空調の風が身体へ直接当たりにくい。

深い軒や天井によって、少し守られている感覚がある。

そして、遠くを見ることができる。

そうした小さな環境が重なって、

「落ち着く」

という感覚が生まれます。

店舗デザインは、目に見える形だけではありません。

光。

音。

温熱環境。

素材。

視線。

人との距離。

身体全体で感じる環境を整えることが、滞在時間の質につながります。


建築は、料理より前に出ない方がいい

雅山では、岐阜県東白川村の東濃檜を主要な木材として使っています。

ただ、

「木の建築です」

と強く主張することが目的ではありませんでした。

主役は、そこで過ごす人と料理です。

料理をいただいているとき、ふと庭を見る。

会話が途切れたとき、軒の向こうを見る。

立ち上がったとき、木の香りに気づく。

そのくらいの距離がいいと思っています。

建築が自分を見せるために前へ出るのではなく、

料理や、人と過ごす時間を少し豊かにする。

雅山では、その関係を大切にしました。

蕎席 雅山はMUSE Design Awards 2026のArchitectural Design – Hospitality部門でGold Winnerを受賞しました。

築70年工場を再生した「森と川に咲く花」のSilver Winnerとあわせて、受賞の背景はこちらで紹介しています。

MUSE Design Awards 2026|新築店舗と既存建築リノベーションが評価された理由


「立地が悪い」は、本当に弱点なのか

店舗や事業の相談では、

「道路がうるさい」

「景色がよくない」

「土地の形が悪い」

「建物が古い」

「狭い」

といった話を聞きます。

確かに、簡単な条件ではありません。

でも私は、

本当にそれは、最後まで弱点のままだろうか。

と考えます。

道路沿いだからこそ、

外の慌ただしさと、内部の静けさの差を強く感じられる。

狭いからこそ、

人と人との距離を丁寧につくれる。

古い建物だからこそ、

新築にはない時間や素材を活かせる。

建築は、条件を消す仕事だけではありません。

条件の意味を変える仕事でもある。

雅山の「国道沿い」という条件も、そう考えました。


既存店舗でも、条件を「価値」に変えることはできる

この考え方は新築だけではありません。

古い店舗。

住宅。

工場。

事務所。

既存建物を飲食店や店舗へ用途転換する場合にも同じです。

既存建物には、

構造。

素材。

庭。

建具。

周囲との関係。

長い時間。

など、すでにそこにしかない条件があります。

すべてを消して新しくするのではなく、

何を残せば、店の価値になるのか。

を考える。

ただし、古いものを残すこと自体が目的ではありません。

事業性。

客層。

動線。

工事費。

建物の状態。

将来性。

まで見ながら、残すか変えるかを判断します。

リノベーション・既存建築再生の事例を見る

建替えか既存建物の活用かで迷う場合は、こちらの記事でも判断基準を整理しています。

建替えか、リノベーションか|「残す価値」を判断する考え方


18席だからこそ生まれる店の価値もある

雅山は18席の店です。

効率だけを考えれば、

もっと席数を増やす。

回転数を上げる。

という考え方もあります。

でも、この店が目指しているのは、多くの人を短時間で迎えることではありません。

料理。

酒。

庭。

木。

光。

静けさ。

人との距離。

それらを含めて、一つの時間を味わってもらうことです。

店舗経営では席数も回転率も重要です。

でも、

席数を最大化することと、店の価値を最大化することは同じではありません。

何席入るかだけでなく、

その席で何を感じてもらえるのか。

まで考える必要があります。


「選ばれる店」には、その場所へ行く理由がある

世の中には、良い料理も、良い商品も、良いサービスもたくさんあります。

だから、

「料理がおいしい」

「商品がよい」

だけでは差をつくることが難しい場合があります。

では、なぜその店へ行くのか。

少し遠くても、なぜその場所を選ぶのか。

店へ向かう。

扉を開ける。

席へ座る。

料理を待つ。

窓の外を見る。

会話をする。

食事を終える。

店を出る。

そのすべてが店の体験です。

私は、

店舗設計とは、その店が「選ばれる理由」を空間にする仕事

だと考えています。

その考え方を、アオテアロアの実例からもう少し詳しく書いた記事がこちらです。

店舗設計のコンセプトはどう生まれるのか|「選ばれる理由」を空間にする


繁盛を、建築だけの成果とは考えない

雅山には、先々まで予約が入っています。

ただし、私はそれを

「建築が繁盛させた」

とは考えていません。

店主夫妻の料理。

もてなし。

日々の運営。

店の評判。

さまざまなものが重なっています。

建築は、その一つです。

でも、

店が目指すことと、料理が目指すことと、建築が目指すこと。

それらが同じ方向を向いていることは、とても重要だと思います。

建築は経営そのものではない。
しかし、経営を支える環境にはなれる。

店舗設計でも、私はそこを考えています。


建築と経営を、別々に考えない

飲食店では、

建築費。

席数。

厨房。

家賃。

回転率。

スタッフ数。

など、事業として考える数字があります。

一方で、

居心地。

記憶。

ブランド。

また来たいと思う気持ち。

そこでしか得られない体験。

数字だけでは測りにくい価値もあります。

その両方を見る必要があります。

「格好いい店をつくる」だけでもない。
「効率のよい店をつくる」だけでもない。

その事業にとって、何へ投資することが店の価値になるのか。

そこから店舗設計を考えます。

建築と経営をどう結びつけるのかについてはこちらでも書いています。

なぜ建築家に「経営」から相談するのか


条件は、制約であると同時に、建築の種になる

私は、真っ白な状態から建築を考えることはほとんどありません。

土地があります。

予算があります。

店主の思いがあります。

周囲の環境があります。

既存建物が残っている場合もあります。

法律もあります。

事業としての条件もあります。

それぞれに、良いところと難しいところがあります。

だから、

「この条件だからできることは何だろう。」

と考えます。

雅山では、国道沿いという条件がありました。

その条件を消そうとするのではなく、

外の慌ただしさから、内部の静けさへ移っていく体験

へ変えました。

条件は、制約であると同時に、その建築にしかない答えを見つけるための種でもあります。


建築相談カフェ|まだ店の形が決まっていない段階から

梶浦博昭環境建築設計事務所は、愛知県一宮市を拠点に、名古屋・愛知・岐阜・三重を中心として、飲食店、カフェ、店舗、ショールームなどの新築・リノベーション、既存建築活用、用途転換を設計しています。

「立地条件がよくない」

「既存建物を店舗に使えるか知りたい」

「何席にすればよいか迷っている」

「他の店との違いを空間でもつくりたい」

「まだ具体的なデザインが決まっていない」

そんな段階からでも構いません。

人も、場所も、目的も違う。
だから、建築の答えも一つではありません。

さらに、

一つひとつの建築に、その人だけの理由がある。
その想いに向き合い、建築を考える。

店の形を決める前に、

誰に来てもらいたいのか。

どんな時間を過ごしてもらいたいのか。

なぜこの店を選んでもらいたいのか。

そこから一緒に整理します。

梶浦博昭環境建築設計事務所では、建物をつくる前から相談できる**「建築相談カフェ(90分・無料)」**を行っています。

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