【I-CAFEは、カフェという用途を持つ商業建築です】
カフェには、飲み物や食事を提供するという明確な機能があります。しかし、同じような商品を提供する店が数多くある中で、なぜ、人はその店を選ぶのでしょうか。価格。味。メニュー。立地。もちろん重要です。しかし、それだけではありません。窓から見える景色。光の入り方。風。座ったときの落ち着き。人との距離。そこで過ごす時間。I-CAFEでは、商品そのものだけではなく、「その場所にいること」まで商業価値にできないかと考えました。
〖商品で選ばれる店から、場所で選ばれる店へ〗
商品は比較できます。価格も比較できます。メニューも比較できます。しかし、あの席から見える景色。夕方に入る光。風を感じながら過ごす時間。その場所の静けさ。は、簡単には比較できません。だから商業建築では、商品以外にも「ここを選ぶ理由」をつくることができる。I-CAFEでは、そこを建築から考えています。
〖景色があるだけでは、商業価値にはならない〗
景色の良い土地に建物をつくれば、自動的に魅力的な店になるわけではありません。どこから景色を見るのか。いつ見えるのか。入口からすぐ見せるのか。席に着いたとき初めて見せるのか。近景と遠景をどう重ねるのか。建築によって、景色の感じ方は変わります。自然そのものをつくることはできない。しかし、自然との出会い方は設計できます。I-CAFEでは、景色を背景として使うのではなく、滞在体験そのものへ取り込みました。
〖「もう少しいたい」と思う理由をつくる〗
商業施設では、効率よく人を動かすことが求められる場合があります。一方、カフェでは、少し長くいたい。もう一杯飲みたい。誰かと話していたい。外を眺めていたい。という気持ちにも価値があります。これは、単に客席を快適にするという話ではありません。時間を過ごしたいと思える場所をつくること。そこまで含めて商業建築だと考えています。
〖滞在時間ではなく、「滞在したくなる質」をつくる〗
長く滞在してもらえばよい、という単純な話でもありません。居心地がいい。気持ちが落ち着く。誰かを連れてきたくなる。また同じ席に座りたくなる。その結果として、人はその場所に時間を使います。つまり重要なのは、時間を伸ばすことではなく、その場所に時間を使いたいと思わせること。建築が商業に関われるのは、こうした部分です。
〖自然を「デザイン」にしすぎない〗
自然素材を使えば、自然を感じる建築になるとは限りません。大切なのは、光が動く。風を感じる。季節によって景色が変わる。時間によって空間の表情が変わる。ということです。建築が自然を演出するのではなく、建築が少し引くことで、自然そのものが主役になる。I-CAFEでは、商業空間の中に自然を飾るのではなく、自然と一緒に過ごせる場所をつくることを考えました。
〖商業建築は「比較されにくい価値」をつくれる〗
価格を下げれば、さらに安い店が現れるかもしれません。商品を増やせば、もっと品揃えの多い店が現れるかもしれません。しかし、この景色。この光。この空気。この居心地。この場所で過ごした記憶。は、その場所にしかありません。商業建築には、価格や商品スペックだけでは比較できない価値をつくる力があります。それは、事業にとって一つの大きな違いになります。
〖人は、商品だけを記憶して店を選んでいるわけではない〗
店を思い出すとき、何を食べたかだけではなく、誰といたか。どこに座ったか。どんな景色だったか。どんな気分になったか。を一緒に覚えていることがあります。建築は、商品と、人の記憶を結びつける場所でもあります。その記憶が、また行きたい。今度は誰かを連れて行きたい。と思う理由になる。商業空間を設計するということは、そうした記憶の背景まで考えることでもあります。
〖店舗の価値を、床面積だけで考えない〗
商業計画では、何席取れるか。何坪あるか。厨房をどこまで小さくできるか。という効率が重要です。しかし、すべてを席で埋めることが、最も価値の高い使い方とは限りません。窓の前の余白。視線が抜ける場所。人と人との距離。外との間。何もしない場所。こうした場所があることで、空間全体の体験が豊かになることがあります。床を埋めることと、店の価値を高めることは同じではありません。
〖「わざわざ行く理由」を建築につくる〗
これからの店舗には、便利さとは反対の価値も必要になることがあります。駅から近い。すぐ買える。すぐ食べられる。とは別に、少し時間をかけても行きたい。そこでしか得られない時間を過ごしたい。という価値です。特にカフェ、レストラン、宿泊施設などでは、建築そのものが目的地の一部になることがあります。I-CAFEでは、商品を受け取るためだけではなく、場所そのものを体験するために訪れたくなる商業建築を考えました。
〖これはカフェだけの話ではない〗
この考え方は、レストラン。宿泊施設。サロン。物販店。ショールーム。ギャラリー。さまざまな商業建築に共通します。飲食店なら、料理+食事をする時間。宿泊なら、客室+その土地で過ごす時間。店舗なら、商品+選ぶ時間。サロンなら、施術+安心して身を預ける時間。商品やサービスに、場所でしか得られない体験を重ねる。そこに建築が加わる意味があります。
〖新築商業建築は、「経営の前提」から設計できる〗
新築の強みは、形を自由につくれることだけではありません。どんな人に来てほしいか。どのくらい滞在してほしいか。どんな客層に選ばれたいか。どんな店として記憶されたいか。将来、どんな使い方に変わる可能性があるか。事業の考え方から逆算して、建築をつくれること。そこが大きいと考えています。客席数を決めてから建築を考えるのではなく、「どんな店にしたいのか」から、必要な空間を考える。
〖「売る場所」ではなく、「選ばれる理由」をつくる〗
I-CAFEで考えたのは、カフェらしい建物をつくることではありません。なぜここに来るのか。なぜここに座りたいのか。なぜ少し長くいたくなるのか。なぜ、また訪れたいと思うのか。そこまで含めて、商業建築として考えました。梶浦博昭環境建築設計事務所では、商業施設を設計するとき、「何を売る場所か」だけではなく、「なぜこの場所が選ばれるのか」を考えます。商品は変わります。メニューも変わります。流行も変わります。しかし、この場所で過ごした時間。景色。光。風。人との記憶。は、その店にしか残りません。商品で選ばれる店から、場所そのものが選ばれる店へ。I-CAFEは、その可能性を考えた商業建築です。
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