【海外で、日本をどう伝えるか】
中国・張家港という場所で、日本料理店をつくる。そこで最初に考えたのは、「日本らしさとは、何を置けば伝わるのか」ではありませんでした。むしろ、
「日本らしい静けさを、どう感じてもらうか」ということでした。装飾を増やすのではなく、素材、光、余白、人と人の距離から、日本の空間をつくる。そこから豊月亭の設計が始まりました。
【檜の香りまで、空間の一部にする】
日本料理店だからといって、記号的な和風にする必要はありません。豊月亭では、檜を使い、その質感や香りまで含めて空間をつくりました。木に触れる。香りを感じる。光がやわらかく反射する。視覚だけではなく、身体で感じるものを重ねることで、海外にいながら日本の空気を感じられる場所を目指しました。
【枯山水は、飾りではなく「間」をつくる】
空間の中には、坪庭として枯山水を設けています。庭そのものを見せるためではありません。客席と客席の間。人と人の間。食事と食事の間。その中に、少し呼吸できる余白をつくるためです。何もない場所をつくることも、建築の一部です。賑やかさを足すのではなく、静けさを置く。その感覚を大切にしました。
【一つの店の中に、異なる時間をつくる】
豊月亭には、カウンター。個室。ダイニング。それぞれ性格の違う場所があります。接待で使う時間。親しい人と向き合う時間。少し広がりのある食事の時間。すべてを同じ空間にするのではなく、使われ方によって距離感や落ち着き方を変えました。「雪月花」という日本的な感覚も手掛かりにしながら、場面ごとに異なる静けさをつくっています。
【本物らしさは、説明しなくても伝わる】
海外で日本料理店をつくるとき、日本的なものをたくさん置けば、本物らしくなるわけではありません。素材の選び方。光の落とし方。天井の高さ。庭との距離。人が座ったときの視線。その一つひとつを丁寧に整えることで、「何となく違う」という感覚が生まれます。それが、この店で目指した日本らしさです。
【飲食店は、料理の背景をつくる場所ではない】
飲食店の建築は、料理を邪魔しない背景であればよい。そう考えることもできます。しかし私は、料理、接客、客同士の距離、素材、光、音までが一つになったとき、初めてその店にしかない体験が生まれると考えています。豊月亭では、日本料理を提供することと、日本の静けさを体験してもらうことを分けませんでした。料理を食べる場所ではなく、その料理の世界観に入る場所をつくる。そこまで考えることが、飲食店の建築にはできると思っています。
【海外でも、その店にしかない答えを探す】
中国であっても、日本であっても、最初から「和風」「高級」「モダン」といった言葉で形を決める必要はありません。どんな料理を出すのか。どんな客を迎えるのか。どんな時間を過ごしてほしいのか。その土地で、何を伝えたいのか。豊月亭では、その問いから、檜、枯山水、光、余白、カウンター、個室という建築へつなげました。こうした、その店の本質を読み解き、空間として組み立てることも、梶浦博昭環境建築設計事務所が考える飲食店設計・商業建築・空間ブランディング・空間戦略です。
名古屋・愛知県・岐阜県・三重県、また海外で飲食店や商業施設をお考えでしたら、内装イメージを固める前の段階からご相談ください。その店にしかない空気は、デザインを決める前に見つけるものだと考えています。
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