オフィスビルの収益性は、立地や面積だけでは決まりません。現代のテナント企業が求めるのは、「ただの器」ではなく、ブランド力・快適性・持続性を備えた空間だと考えます。提案したデザインオフィスビルは、そのすべてを高次元で融合し、単なる不動産から「選ばれる場所」へと昇華させました。
まず、空間価値の最大化。限られた敷地や建蔽率の中でも、動線計画、視線設計、自然光の取り入れ方、外部とのつながりといった建築的手法により、面積以上の開放感や機能性を生み出すことが可能です。テナントが長期的に満足し、離れにくくなる“理由ある快適さ”が構築されます。
次に、「空間ブランディング」効果。ファサードやエントランスの設え、共有部のデザイン、素材の選定に至るまで、一貫した美意識を持った設計がなされることで、建物全体の印象が格段に高まります。これは入居企業にとっての“企業イメージの強化”にもつながり、賃料以上の付加価値を生みます。今回、エントランスホールの作品は、世界的な和紙アーティスト、堀木エリ子さんに制作していただき、建築に品格をもたらしています。
さらに、メンテナンス性・将来的な可変性も設計段階から意識されます。例えば、更新しやすい設備導線、柔軟に間仕切れるレイアウト、配管・空調スペースの工夫など、長期保有を前提としたサステナブルな設計が、維持管理コストを抑え、時代の変化にも強い資産にします。
最も大きなメリットは、空間そのものが「差別化の源泉」となることです。同じような条件のビルが乱立するエリアであっても、「設計思想のある建物」は明確な存在感を放ちます。選ばれ続けるオフィスビルとは、機能性と美意識の両立がなされ、入居する企業の感性や価値観に響くものです。
経営の視点を持ちながら、空間の可能性を最大限に引き出し、不動産を永続的なブランド資産へと変える力。それが、本質的な価値だと思いデザインしました。このような考えで建てたNICHIAI BLDは、竣工後、順調に入居が決定し、事業として成功しています。
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