【伸縮アトリエは、使われなくなった工場を、新しい創造の場へ転換したリノベーションです】
産業が変わる。会社が移転する。生産方法が変わる。すると、工場としての役割を終えた建物だけが残ることがあります。しかし、事業の寿命と、建築の寿命は同じではありません。工場に残る大きな空間、構造、高さ、搬入動線。それらを読み直せば、次の活動を受け入れる建築資源になる可能性があります。
〖工場の大空間を、用途を受け入れる余白へ〗
工場は、住宅や一般的なオフィスとは異なるスケールを持っています。その大きさは、使いにくさではなく、人が集まる。大きなものを展示する。仕事とイベントを共存させる。店舗とオフィスを組み合わせる。といった可能性にもなります。大きな空間は、次の用途を受け入れる余白でもある。伸縮アトリエでは、その余白を細かな部屋で固定せず、活動に合わせて変化できる空間として考えました。
〖建物を、人の活動に合わせて変える〗
少人数で使う。大勢で集まる。制作する。展示する。打ち合わせる。活動によって必要な空間は変わります。そこで、可変する壁によって空間そのものを伸縮できるようにしました。人が建物に合わせるのではなく、建物が人の活動に合わせる。これはオフィス、店舗、ギャラリー、コワーキング、地域施設などの既存建物活用にもつながる考え方です。
〖工場を、次の仕事へ使う〗
既存工場は、工場以外にも使えます。オフィス。店舗。ショールーム。ギャラリー。研修施設。コワーキング。地域拠点。工場の大きな構造や天井高さを消して一般的な建物へ近づけるのではなく、そのスケールを次の用途へ活かす。特に製造業では、かつて生産していた場所そのものを、企業の技術や歴史を伝えるショールームへ変えることもできます。「つくっていた場所」を、「伝える場所」へ変える。工場リノベーションならではの可能性です。
〖一つの用途に固定しない〗
工場の大きな空間は、一つの用途だけに使う必要もありません。働く。展示する。食べる。学ぶ。集まる。複数の活動を同じ建物に重ねることができます。工場だった場所が、仕事・商業・文化・地域活動が交わる複合施設へ変わることもあります。既存建物活用とは、単純な用途変更だけではありません。建物と社会との関係そのものを変えることもできます。
〖工場の痕跡を、全部消さない〗
既存工場を別用途へ変えるとき、きれいにしすぎると、その建物らしさまで失うことがあります。柱。梁。床。構造。古い設備の痕跡。工場ならではのスケール。すべてを保存する必要はありません。しかし、次の用途にとって魅力になるものは残す。新しい用途と以前の建物の記憶が重なることで、新築とは違う空間になります。
〖大きな工場を、小さく使い始める〗
大規模な工場を一度に全面改修すれば、投資も大きくなります。しかし、まず一角から。次に別の場所へ。活動が育てば、さらに広げる。という方法もあります。大きな建物を、小さく使い始める。既存工場だからこそ、事業の成長に合わせながら段階的に建物を育てることもできます。
〖建て替える前に、工場の「次」を考える〗
使われなくなった工場には、解体。売却。建て替え。という選択肢があります。しかし、その前に、再利用できないかを考える。オフィスへ。店舗へ。ショールームへ。飲食へ。地域拠点へ。もちろん、構造・耐震・法規・設備・事業性などの検討は必要です。すべての工場が再生に適しているわけではありません。だからこそ、壊すか残すかを決める前に、この建物が次に何になれるのかを調べる。その価値があります。
〖今はない建築からも、次へ残るものがある〗
伸縮アトリエは、現在はもう存在していません。しかし既存建物利用の価値は、永久に保存できたかだけでは測れません。使われなくなった工場に新しい役割を与え、人が集まり、創造が生まれ、建物がもう一度使われた。使われなくなった建築に、もう一度時間を与える。そこにも、リノベーションの意味があります。
〖工場としての役割が終わっても、建築の第二章は始められる〗
伸縮アトリエで考えたのは、古い工場をきれいにすることではありません。この大きな建築資源を、次に何へ変えられるのか。ということでした。工場。倉庫。事業所。こうした既存建物には、最初の用途が終わったあとにも可能性があります。オフィス。店舗。ショールーム。ギャラリー。教育施設。コワーキング。地域拠点。複合施設。梶浦博昭環境建築設計事務所では、既存工場を過去の用途だけで判断せず、次の事業や活動を受け入れる建築資源として読み直します。工場としての役割が終わったところから、建築の第二章が始まることがあります。伸縮アトリエは、その可能性を考えた実践です。
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