新しくした部分だけを目立たせない。既存の柱・建具・寸法・素材・光を読み取り、必要な機能だけを静かに加える。住宅から旅館・店舗・医院まで、建物が積み重ねてきた時間を次の使い方へつなぐリノベーション 曙 既存建物の時間を途切れさせない部分リノベーション・既存建物再生 名古屋・愛知・岐阜・三重

  • 愛知県一宮市

【「曙」は、既存住宅の客室、洗面、トイレ、外納戸を中心に改修したリノベーションです】
この建物で大切にしたのは、「どこを新しくしたのか」が分かることではありません。むしろ、以前からそこにあったように、新しい部分が既存建物の中へ馴染むこと。でした。古い建物には、長い時間をかけてできた独自のバランスがあります。柱の太さ。建具の寸法。光の入り方。素材の色。部屋と庭との距離。そこへ新しいものを入れるとき、既存建物を背景として扱うのではなく、既存建物そのものを、新しい設計の基準にする。曙では、そこから考えています。
〖既存建物には、すでに設計の手がかりがある〗
新築では、寸法や素材、空間の関係をゼロから考えます。しかし既存建物には、すでに答えの一部があります。柱が立っている。建具がある。庭がある。天井高さが決まっている。長い時間使われてきた材料がある。これらを単なる制約と見るか、次の設計を考える手がかりと見るか。それによってリノベーションは大きく変わります。私は既存建物を前にしたとき、まず「何を変えられるか」ではなく、「この建物は、すでに何を持っているのか」を見ます。
〖既存建物を、新築に近づけない〗
リノベーションをすると、古い部分をできるだけ新築のように見せたくなることがあります。しかし、それでは既存建物を使う意味まで薄くなる場合があります。曙では、既存部分と新しい部分をすべて同じ新しい表情へ揃えることはしませんでした。古いものには古いものの時間がある。新しいものには現在の役割がある。その二つを無理に一枚へ塗りつぶさず、一つの建築として自然につながる状態をつくる。それが、この作品で考えた既存建物再生です。
〖新旧の境界を、デザインしすぎない〗
既存建物の改修では、「ここからが新しい部分です」と明確に見せる方法もあります。しかし曙では、逆を考えました。境界を主張しない。新しい部分だけを作品化しない。既存の建具や素材、光との関係を読みながら、必要なものを加えていく。完成したとき、「あれ、ここは昔からこうだったのではないか」と思えるくらいがちょうどいい。設計した痕跡を小さくすることで、既存建物全体の存在感を残しています。
〖部分改修だからこそ、既存建物を深く読む必要がある〗
曙は、建物全体を壊してつくり直したプロジェクトではありません。客室。洗面。トイレ。外納戸。限られた場所を更新しています。部分改修では、新しくした場所だけが浮いてしまうと、建物全体のバランスが崩れます。だからこそ、既存の寸法。材料。廊下との関係。庭とのつながり。隣の部屋との距離。まで見る必要があります。部分だけを設計するのではなく、部分から建物全体を見る。これも既存建物活用の重要な設計です。
〖古い建物を使う価値は、「時間を買わなくていい」こと〗
新築では、完成したその日から建物の時間が始まります。一方、既存建物にはすでに時間があります。使われた木。少し変化した素材。庭との関係。人が歩いてきた場所。こうしたものは、完成したばかりの建物にはありません。古い建物を使う価値の一つは、その時間をゼロからつくり直さなくてもいいことだと思います。リノベーションでは、その蓄積を消すのではなく、次の時間へつなぐことができます。
〖旅館や料亭では、「変わらないこと」が価値になる〗
この考え方は、非住宅でさらに意味を持ちます。たとえば老舗旅館。客室や水まわり、空調は現代化する必要があります。しかし、玄関。庭。廊下。建具。座敷。まで別の建物のようにしてしまえば、その宿らしさを失うことがあります。料亭や老舗店舗も同じです。利用者は、新しい設備だけを求めているとは限りません。「以前から知っている場所が、きちんと今に更新されている」という安心感も価値になります。既存建物再生では、変化だけでなく、変わらないものを設計することもできます。
〖医院では、建物と人の記憶も引き継ぐ〗
長く地域で使われてきた医院にも、時間があります。患者さんが覚えている入口。待合から見える庭。昔からある建物の佇まい。代替わりや診療内容の変化によって、機能は更新する必要がある。しかし、すべてを別の医院のように変える必要はありません。新しい医療と、地域が持っている記憶をどう共存させるか。既存医院のリノベーションでは、そこも設計対象になります。
〖商業建築では「新しいデザイン」より「本物の時間」を使う〗
店舗では、既存建物らしさを演出するために、あえて古く見える材料を使うことがあります。しかし、本当に時間を積み重ねてきた建物には、その演出が必要ありません。既存の梁。古い建具。庭。奥行き。その建物にしかないものを読み取り、必要な機能だけを加える。すると、新しく“雰囲気をつくる”のではなく、すでにある雰囲気を商業空間の価値にできる。既存店舗や宿泊施設を活用する大きな利点です。
〖「壊さない」ではなく、「つなぐ」〗
既存建物活用を、できるだけ壊さないこととだけ考えると、少し違います。必要な場所は変える。設備も更新する。性能も整える。場合によっては撤去する部分もある。重要なのは、変えることで、それまでの建物との関係を切らないこと。過去の建物と、現在必要な機能と、これからの使い方。その三つをつなぐ。曙では、それをできるだけ自然な形で行いました。
〖既存建物には、「新しくしない価値」がある〗
建築では、新しいことが価値として語られやすいものです。しかし既存建物再生では、新しくしない。残す。馴染ませる。目立たせない。という判断が、むしろ建物の価値を高めることがあります。何かを足したことが分からないほど自然である。それでも、使いやすくなっている。快適になっている。次の時間へ進んでいる。既存建物だからこそできる設計です。
〖既存建物再生とは、建物の「続き」を設計すること〗
曙では、建物全部を新しくするのではなく、客室・洗面・トイレ・外納戸という必要な場所を更新しました。そこで目指したのは、新しいデザインを既存建物へ持ち込むことではありません。この建物が、これまでの時間を途切れさせずに、次へ進める状態をつくること。住宅。旅館。料亭。店舗。医院。オフィス。長く使われてきた建物には、それぞれ独自の時間があります。梶浦博昭環境建築設計事務所では、既存建物を改修するとき、何を新しくするかだけではなく、その建物が持っている「文法」を読み、何を変えれば自然に次の時間へ進めるのかを考えます。リノベーションは、建物の過去を消して新しい物語を始めることだけではありません。すでに始まっている物語の、続きを設計することもできる。曙は、そんな既存建物再生を考えたプロジェクトです。

曙 既存建物の時間を途切れさせない部分リノベーション・既存建物再生 名古屋・愛知・岐阜・三重

【「曙」は、既存住宅の客室、洗面、トイレ、外納戸を中心に改修したリノベーションです】
この建物で大切にしたのは、「どこを新しくしたのか」が分かることではありません。むしろ、以前からそこにあったように、新しい部分が既存建物の中へ馴染むこと。でした。古い建物には、長い時間をかけてできた独自のバランスがあります。柱の太さ。建具の寸法。光の入り方。素材の色。部屋と庭との距離。そこへ新しいものを入れるとき、既存建物を背景として扱うのではなく、既存建物そのものを、新しい設計の基準にする。曙では、そこから考えています。
〖既存建物には、すでに設計の手がかりがある〗
新築では、寸法や素材、空間の関係をゼロから考えます。しかし既存建物には、すでに答えの一部があります。柱が立っている。建具がある。庭がある。天井高さが決まっている。長い時間使われてきた材料がある。これらを単なる制約と見るか、次の設計を考える手がかりと見るか。それによってリノベーションは大きく変わります。私は既存建物を前にしたとき、まず「何を変えられるか」ではなく、「この建物は、すでに何を持っているのか」を見ます。
〖既存建物を、新築に近づけない〗
リノベーションをすると、古い部分をできるだけ新築のように見せたくなることがあります。しかし、それでは既存建物を使う意味まで薄くなる場合があります。曙では、既存部分と新しい部分をすべて同じ新しい表情へ揃えることはしませんでした。古いものには古いものの時間がある。新しいものには現在の役割がある。その二つを無理に一枚へ塗りつぶさず、一つの建築として自然につながる状態をつくる。それが、この作品で考えた既存建物再生です。
〖新旧の境界を、デザインしすぎない〗
既存建物の改修では、「ここからが新しい部分です」と明確に見せる方法もあります。しかし曙では、逆を考えました。境界を主張しない。新しい部分だけを作品化しない。既存の建具や素材、光との関係を読みながら、必要なものを加えていく。完成したとき、「あれ、ここは昔からこうだったのではないか」と思えるくらいがちょうどいい。設計した痕跡を小さくすることで、既存建物全体の存在感を残しています。
〖部分改修だからこそ、既存建物を深く読む必要がある〗
曙は、建物全体を壊してつくり直したプロジェクトではありません。客室。洗面。トイレ。外納戸。限られた場所を更新しています。部分改修では、新しくした場所だけが浮いてしまうと、建物全体のバランスが崩れます。だからこそ、既存の寸法。材料。廊下との関係。庭とのつながり。隣の部屋との距離。まで見る必要があります。部分だけを設計するのではなく、部分から建物全体を見る。これも既存建物活用の重要な設計です。
〖古い建物を使う価値は、「時間を買わなくていい」こと〗
新築では、完成したその日から建物の時間が始まります。一方、既存建物にはすでに時間があります。使われた木。少し変化した素材。庭との関係。人が歩いてきた場所。こうしたものは、完成したばかりの建物にはありません。古い建物を使う価値の一つは、その時間をゼロからつくり直さなくてもいいことだと思います。リノベーションでは、その蓄積を消すのではなく、次の時間へつなぐことができます。
〖旅館や料亭では、「変わらないこと」が価値になる〗
この考え方は、非住宅でさらに意味を持ちます。たとえば老舗旅館。客室や水まわり、空調は現代化する必要があります。しかし、玄関。庭。廊下。建具。座敷。まで別の建物のようにしてしまえば、その宿らしさを失うことがあります。料亭や老舗店舗も同じです。利用者は、新しい設備だけを求めているとは限りません。「以前から知っている場所が、きちんと今に更新されている」という安心感も価値になります。既存建物再生では、変化だけでなく、変わらないものを設計することもできます。
〖医院では、建物と人の記憶も引き継ぐ〗
長く地域で使われてきた医院にも、時間があります。患者さんが覚えている入口。待合から見える庭。昔からある建物の佇まい。代替わりや診療内容の変化によって、機能は更新する必要がある。しかし、すべてを別の医院のように変える必要はありません。新しい医療と、地域が持っている記憶をどう共存させるか。既存医院のリノベーションでは、そこも設計対象になります。
〖商業建築では「新しいデザイン」より「本物の時間」を使う〗
店舗では、既存建物らしさを演出するために、あえて古く見える材料を使うことがあります。しかし、本当に時間を積み重ねてきた建物には、その演出が必要ありません。既存の梁。古い建具。庭。奥行き。その建物にしかないものを読み取り、必要な機能だけを加える。すると、新しく“雰囲気をつくる”のではなく、すでにある雰囲気を商業空間の価値にできる。既存店舗や宿泊施設を活用する大きな利点です。
〖「壊さない」ではなく、「つなぐ」〗
既存建物活用を、できるだけ壊さないこととだけ考えると、少し違います。必要な場所は変える。設備も更新する。性能も整える。場合によっては撤去する部分もある。重要なのは、変えることで、それまでの建物との関係を切らないこと。過去の建物と、現在必要な機能と、これからの使い方。その三つをつなぐ。曙では、それをできるだけ自然な形で行いました。
〖既存建物には、「新しくしない価値」がある〗
建築では、新しいことが価値として語られやすいものです。しかし既存建物再生では、新しくしない。残す。馴染ませる。目立たせない。という判断が、むしろ建物の価値を高めることがあります。何かを足したことが分からないほど自然である。それでも、使いやすくなっている。快適になっている。次の時間へ進んでいる。既存建物だからこそできる設計です。
〖既存建物再生とは、建物の「続き」を設計すること〗
曙では、建物全部を新しくするのではなく、客室・洗面・トイレ・外納戸という必要な場所を更新しました。そこで目指したのは、新しいデザインを既存建物へ持ち込むことではありません。この建物が、これまでの時間を途切れさせずに、次へ進める状態をつくること。住宅。旅館。料亭。店舗。医院。オフィス。長く使われてきた建物には、それぞれ独自の時間があります。梶浦博昭環境建築設計事務所では、既存建物を改修するとき、何を新しくするかだけではなく、その建物が持っている「文法」を読み、何を変えれば自然に次の時間へ進めるのかを考えます。リノベーションは、建物の過去を消して新しい物語を始めることだけではありません。すでに始まっている物語の、続きを設計することもできる。曙は、そんな既存建物再生を考えたプロジェクトです。

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