【上質な住まいとは、何だろう】
上質な住宅をつくろうとすると、高価な素材を使う。大きな空間をつくる。設備を充実させる。という方向へ向かいがちです。もちろん、それも一つの方法です。しかし私は、「何を足すかではなく、どう感じるか」から考えました。光がやわらかい。外からの視線を気にせず過ごせる。木や石に触れる。庭の変化を感じる。何もしていない時間が心地よい。この住宅で目指した上質さは、そうした日常の中にあります。
【外に閉じて、中庭へ開く】
住まいの中心には、中庭があります。外部からの視線を抑えながら、室内からは光や緑を感じられるようにしました。カーテンを閉めてプライバシーを守るのではなく、建築そのもので視線を整える。その結果、守られているのに、開放されている。一見すると相反する二つの感覚を、同時につくることができます。中庭は単なる庭ではなく、暮らしに光と静けさを届ける場所になりました。
【むくり屋根が、建築をやわらかく包む】
この家を特徴づけるのが、緩やかに反った「むくり屋根」です。強い造形を見せるための屋根ではありません。わずかな曲線によって、建物全体に柔らかな表情をつくり、内部にも包まれるような感覚を与えています。直線だけでは生まれない、わずかな揺らぎ。目立たないけれど、感じる。日本建築には、そうした美しさがあります。
【素材は、高級感を見せるために使わない】
室内には、東濃檜、十和田石、ヨシなどの自然素材を使っています。しかし、高価な素材を並べて豪華に見せることが目的ではありません。木の香り。石の冷たさ。ヨシの細かな表情。手に触れたときの感覚。素材が本来持っているものを、そのまま感じられるように使いました。素材そのものが静かに語る空間。時間が経つことで色や艶が変わっていくことも、この住宅の一部です。
【障子を通した光は、時間を見せてくれる】
窓から直接光を入れるのではなく、障子を通して室内へ届けています。朝と夕方。晴れた日と曇りの日。同じ部屋でも、光によって表情が変わります。均一に明るくすることだけが、心地よさではありません。明るい場所。少し暗い場所。陰影のある場所。その違いがあることで、空間に奥行きが生まれます。光を入れるのではなく、光の質を整える。それも、この住宅で大切にした設計です。
【日本らしさは、「和風」にすることではない】
現代和風住宅というと、格子をつける。和室をつくる。木を多く使う。といった形を想像するかもしれません。しかし、日本建築の魅力は、形だけではありません。軒。陰影。余白。素材。庭との距離。内と外の曖昧な境界。この住宅では、昔の住宅をそのまま再現するのではなく、日本建築が大切にしてきた感覚を、現代の暮らしへ置き換えることを考えました。
【「豪華」ではなく、「長く好きでいられる」を考える】
家は、完成写真を見るためのものではありません。毎日暮らし、10年、20年と時間を重ねていく場所です。だからこそ、一瞬の驚きより、朝の光。庭の緑。木の手触り。静かな夜。そうした小さな体験が、長く続くことを大切にしました。住宅を考えるとき、「どんなデザインにするか」より先に、「この家で、どんな時間を過ごしたいのか」を考えてみる。そこから、その人にしかつくれない住宅が見えてきます。
梶浦博昭環境建築設計事務所では、名古屋・愛知県・岐阜県・三重県で、注文住宅・中庭住宅・現代和風住宅の設計を行っています。間取りやデザインを決める前の段階からご相談ください。上質な住まいは、何を足すかではなく、何を感じながら暮らすかから始まります。
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